司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

GIVE&GIVE

※この記事は勉強法や司法試験とほとんど無関係です。

 

 先日、オンライン上で“人間”として活動している際に「ペンギンのひとですか?」と声をかけて頂いたのですが、とっさに「いえ、何の話ですか…」と嘘をついてしまいました。すみません。後悔しています。ブログを読んでくださっていたのだとすれば、きちんと感謝の気持ちを伝えるべきでした。こちらから連絡する手段が無いのですが、もしこの記事を読んでくださっていたら、この場を借りてお詫び申し上げます。

 なんとなく「身バレ」するのが怖かったのは、無責任なことを書いて非難されるのが嫌だっただけなのではないか…と思うようになりました。まあ、非難されるのは嫌なので積極的に身バレするようなことは書きませんが、少なくとも声をかけてくださった方には正直に白状することに決めました。(無責任なことは書くかもしれません。)

 さて、身バレした直後、偉そうに勉強法について語るのも恥ずかしいので、今回は趣味の書評を書きます。1週間くらい時間を空けて、また勉強法について書く予定です。今回は『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房)を紹介します。(いや待て、成功について語るほうが恥ずかしくないか…?)

目次

 

恩返し ではなく 恩送り

 少し前の記事で、内田樹さんの本を紹介しました。彼は思想家なので様々な分野について思想を語っていますが、なかでも繰り返し取り上げるテーマの1つに「贈与経済」があります。

 彼が何度も言葉を尽くして語っているようなテーマをここで要約するのは非常に困難ですが、試しにまとめてみます。

・人間は人間との間で、物を「ぐるぐる回す」ことに快感を覚える生き物である。
・貨幣とは、物を「ぐるぐる回す」ことを促すために発明されたものである。
・しかしそもそも、物を「ぐるぐる回す」ためには交換よりも贈与が適している。

(念のため補足しておくと、「ぐるぐる回す」とは、物をコマのように回転させることではなく、甲さん→乙さん→丙さん…と受け渡すことを意味しています。)

 今から10年前の2011年に初版発行された『呪いの時代』(新潮社)という本のなかで、内田樹さんはこんな予言をしています。

 今は夢物語に聞こえるかも知れませんけれど、僕は「交換から贈与へ」という経済活動の大きな流れそのものはもう変わりようがないと思っています。そのうちに、ビジネス実用書のコーナーに「どうすればともだちができるか」「後味のよい贈り物のしかた」というような本が並ぶようになっても、僕は怪しみません。

 それから3年後の2014年、ビジネス実用書コーナーに現れたのが『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』です。少し前に見つけて、読みたいとは思っていたのですが、司法試験が終わって、今後のキャリアを考える段階でようやく読みました。

 この本の紹介に移る前に、『呪いの時代』から次の一節を引用しておきます。「与える人こそ成功する」の結論を先取りしているような文章が出てきます。先ほどの贈与経済の話を踏まえての文章です。

 その人がエンドユーザーであるような人間には誰からも贈与が届かない。贈り物を受け取ったときに、目にも止まらぬ速さで次の贈り先にそれがパスされるような人のところにしか贈り物は届かない。そういうものなのです。

f:id:article23:20211002210710j:plain

(Pixabayからのイメージ画像)

自己犠牲 ではなく 他者志向

『GIVE&TAKE』のなかでは、GIVE(与える)がTAKE(受け取る)よりも多いギバー、TAKEがGIVEよりも多いテイカー、両者のMATCH(対等)を重視するマッチャーの3タイプの性質が紹介されています。

 では、どのタイプの人間が成功するのか? 本のタイトルを見ただけで結論は明白ですが、もっとも成功するのはギバーだそうです。では、反対にもっとも失敗するのは? これもギバーだそうです。

 まず、成功の側面。今後ますますギバーが成功する可能性が高い理由として、サービス業に従事するひとの割合が増えていること、および、インターネットで評判情報が共有されやすくなったこと、の2点をあげています。誰だってテイカーとは関わりたくないですから、この側面は納得しやすいのではないでしょうか。

 次に、失敗の側面。これも納得しやすいと思いますが、ギバーはえてしてテイカーの食い物にされます。

 知り合いの士業の方に聞いた話によると、残念ながら、無料で情報だけを得ようとするひとは一定数存在するそうです。知識を武器に商売をする弁護士(に限らず士業全般)にとって、ギバーとして振る舞うことは、テイカーに食い物にされるだけなのではないでしょうか?

 というわけで、この本の大半は「ギバーとして振る舞いながらテイカーに食い物にされないための方法」を紹介することに費やされています。著者のアダム・グラント氏はビジネススクールで教鞭をとる組織心理学者なので、様々な実験やインタビューをもとに実証的な思考が行われています。

 1つだけ、自分が今までに書いた記事と関連しそうな話があるので、紹介します。私は以前、ひろゆき氏の『1%の努力』の書評らしきものを書いたことがあります(我ながらミーハーだなあ…)。

article23.hatenablog.jp

 そのなかで、複数回の囚人のジレンマゲームおけるTFT戦略(しっぺ返し戦略)というものを勧めたのですが、あれは典型的なマッチャーの戦略です。やられたらやり返す。そしてこの記事では「TFT戦略こそ最強!」と無責任なことを書いたのですが、どうやらもっと強い、ギバーの戦略があるようです。

 ただし、しっぺ返しは与えることと相手に合わせることを、交互に繰り返すほうが有利なことがわかっている。これを「寛大なしっぺ返し」という。「寛大なしっぺ返し」のルールは「よい行いはけっして忘れず、悪い行いをときどき大目に見る」ことだ。(略)

 寛大なしっぺ返しでは、三回に二回は張り合うが、三回に一回は協力的な態度で応じるのである。「寛大なしっぺ返しは、しっぺ返しを簡単に帳消しにすることができるうえ、食い物にされることからも守ってくれる」と、ハーバード大学の数理生物学者のマーティン・ノバックは書いている。

(英文を読んでいないので推測ですが、「張り合う」という翻訳は、「前回のゲームで非協力だった相手に対して、非協力な戦略で報復すること」を意味していると思われます。)

書評 ではなく 鬼滅の刃

 最後に。

 毎回『鬼滅の刃』の話をしないと気が済まないのか!と言われそうですが、毎回『鬼滅の刃』の話をしないと気が済まないので、『鬼滅の刃』の話をします。というか、このセリフを引用したくて長々と書いてきました。

 先日、ついに地上波初放送となった「無限列車編」では、幼き日の煉獄さんに対して、母がこんな言葉をかけるシーンが出てきます。

なぜ自分が人よりも強く生まれたかわかりますか

弱き人を助けるためです

生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者は

その力を世のため人のために使わねばなりません

天から賜りし力で人を傷つけること私腹を肥やすことは許されません

 私は煉獄さんのように強く生まれたわけではないですが、ひとのアドバイスを素直に受け入れる才能に恵まれて、司法試験を通過することができました。受け入れすぎて失敗したこともありますが、成功した勉強法については誰かの役に立てたらいいなと思って書いています。

 というわけで、しつこいですが、次回は勉強法の話を書きます。