司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

ご冗談でしょう、ランニングマンさん

【読むとよいタイミング】勉強開始直後/勉強が捗らないとき

 

司法試験受かったお(^ω^)

天才じゃん!

あ、いやいや、運が良かったのと、皆様に支えられて…

そういうの大丈夫だから!

あ、あと、勉強法に関する本を読みまくったおかげかと…なんだかんだ60冊も

じゃあ何か1冊教えて!

そうだなあ…一番役に立ったのは『脳を鍛えるには運動しかない』かな

…?

いや、運動とか、したくないのよ
もっと楽ちんにさ、

『脳を鍛えるには運動しかない』

 

 先日、実際に友人との間で交わされたやりとりです。会社の同期や親戚とも、似たようなやりとりを交わしました。(気まずい空気が流れると、次善の策として伊藤真に対する信仰心について熱弁しました。)

 ただ、なんとなく「運動」を避けたくなる気持ちはわかります。私も大学生の頃、すなわち最もデカダンな生活を送っていた頃、村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』を読んで、「やめてくれよ健康オタク」と思いました。私の場合、陽の当たる体育会系な生き方を避けるために日陰の文化系な生き方を選んだので、「運動」とか言われると拒絶反応が出たのです。

 しかし、時は流れ、私も健康オタク側に来ました。合格のために手段は選んでいられません。もし「運動」とか言われて拒絶反応が出てしまう方も、自分の達成したい目標に思いをいたして、まずは気軽にこの記事を読んでみてもらえるとうれしいです。

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(Pixabayからのイメージ画像)

目次

 

『脳を鍛えるには運動しかない』

 私が幼かった頃、「脳細胞は増えないので、減る一方だ」と素朴に信じられていました。そのため、頭をぶつけると「ああ、今脳細胞死んだね」と家族に悲しい眼差しで見つめられた記憶があります。

 ところがどっこい、脳細胞は増えるのです。『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)のサブタイトルには、「脳細胞の増やし方」という、とても魅力的なフレーズが入っています。

 では、どういうメカニズムで脳細胞が増えるのでしょうか?

 運動をすることで、脳由来神経栄養因子(BDNF)というタンパク質が分泌されます。これは「肥料」のようなものです。BDNFによって、脳の神経細胞ニューロン)の発生・成長が促されます。アメーバのようなニューロンから軸索が伸びてシナプス結合するイラストは、理科の授業で見たことがあるひとも多いのではないでしょうか。

 著者のジョン・J・レイティ氏は開業医としても活躍されている医学博士です。正確な知識を得たい方は、ぜひとも彼が書いたものを直接読んでみてください。すみません。

 

 ちなみにこの本では記憶力の向上以外にも様々な効果が紹介されていますが、特に私が好きな部分を少しだけ引用させてもらいます。ここでいう「自己規制」は「セルフコントロール」のことだと思います。

 近年、この見方がオーストラリアの研究者たちによって実証された。彼らは、二四人の学生を対象として、二か月に及ぶ運動ブログラムが自己規制に及ぼす影響を調べた。(略)

 彼らはスポーツジムに通う回数が着実に増え、タバコ、カフェイン、アルコールの摂取量が減り、健康的な食べ物を好み、ジャンクフードを敬遠するようになった。衝動買いや予算オーバーの買物をがまんできるようになり、以前ほど腹を立てなくなった。ものごとを先送りしなくなり、約束をきちんと守るようになった。そして、少なくとも以前に比べれば、使った食器をシンクに入れっぱなしにしなくなった。

 誇大広告じゃないか…?と心配になるほど効果をあげていますが、まあ、運動することを勧めているだけなので、たぶん大丈夫でしょう。私も使った食器を翌日までシンクに入れっぱなしにしなくなりました!(※個人の感想です)

『頭を良くしたければ体を鍛えなさい』

 先ほどの本は、勉強以外にも「ストレス」や「パニック」や「依存」に対する運動の効果について述べられています。私はその部分も大変役に立ったわけですが、たしかに分量は多いです。そこで、もっと薄く、勉強に関する部分だけを取り上げた本を紹介しておきます。

『頭を良くしたければ体を鍛えなさい』(中央公論新社)って『脳を鍛えるには運動しかない』と並ぶ冗談みたいなタイトルですが、こちらの共著者も医学博士と理学博士。真面目な本です。重要なエッセンスを凝縮して紹介していて、イラストも豊富なので、とても読みやすいです。

 ただ、私はこの本を近所の大学生協書籍部で購入したため、一般的な書店に置いているかどうか、自信がありません。現時点でAmazonには在庫があるようです。紀伊國屋さんでは見かけたことがないので、ご注意ください。

『一流の頭脳』

 似たような本を2つ紹介してしまったので、趣の異なるタイトルの本も紹介しておきます。日本でも『スマホ脳』(Amazonリンク)がベストセラーになったアンダース・ハンセン氏の『一流の頭脳』(サンマーク出版)です。

 著者は、スウェーデンカロリンスカ研究所でリサーチャーとして活動していた経験のある精神科医です。(タイムリーな話題として、カロリンスカ研究所と言えばノーベル生理学・医学賞の選考委員会があることで有名ですね。)今年6月には、NTV系列『世界一受けたい授業』に「保健体育教師」として出演されていたので、彼の素敵な笑顔をご覧になった方もいるかもしれません。

 他の2冊と同様、運動が記憶力の向上にどうつながるのか、ということが丁寧に説明されています。この本が他の2冊と違うところとして、「ひらめき」あるいは「アイデア」「クリエイティビティ(創造性)」に関して、運動の効果を丁寧に説明している点です。

 少なくとも私の経験した範囲において、予備試験も司法試験も「ひらめき」が無いと通過できない試験ではない、と感じてはいます(悪く言えば「丸暗記でも乗り切れる」試験だと思っています)。しかし、いわゆる「現場思考」の設問もありますし、問題文の事例がどの条文・論点に関係しているのか、という点に関する「ひらめき」があるに越したことはありません。

余談および私見

 現在『無理ゲー社会』(Amazonリンク)がベストセラーとなっている橘玲さんは、本のタイトルがセンセーショナルなので誤解されがちです(少なくとも私は誤解していました)が、膨大な参考文献に基づいて着実に議論を組み立てる、真面目な本を書いています。

 彼は『「読まなくていい本」の読書案内』(筑摩書房)という本のなかで、この半世紀の間にパラダイムシフトを起こした5つの分野の1つとして「進化論」をあげています。あまりに進化論の説明が説得的なので、旧来のパラダイムで説明されているものについて「とりあえず読まなくていい」のではないかと提言しています。

 すみません、ここまでは余談です。2冊とも面白い本でした。

 では、「運動」と「記憶」の関係について、進化論に沿って説明するとどうなるでしょうか?

 よく知られている通り、脳は他の臓器と比較して圧倒的にエネルギーを使います(重量では約2%にすぎないのに、全体の約18%のエネルギーを消費すると言われます)。動き回らなくていいほど食料が豊富であれば、脳内に膨大なネットワークを形成しないほうがエネルギーを節約できます。

 そして、環境の変化によって食料が得られなくなるリスクもありますから、エネルギーを節約できる個体のほうが、エネルギーを浪費する個体よりも生き延びる確率が高いです。ここまでが、動き回らない人間の記憶力が鈍くなるメカニズムに関する仮説です。

 次に、動き回って食料を探さなければならないような環境に置かれた場合について考えてみましょう。どこに木の実が落ちているか? どこに崖があって危険なのか? どこに肉食動物が潜んでいるか? 記憶すべきことは山ほどあります。

 そうなると、記憶力が高い個体のほうが生き延びられる確率は高まります。結果、自然淘汰により「長距離を走ることで記憶力を向上させる」というメカニズムを持った個体が、そうではない個体よりも生存確率が高かったため、現在の人類の形質として残ったのではないか…

最後に

 どうでしょう? 私は一時期、進化論(特に性淘汰)にハマって色々な本を読みあさっていたので、進化論で説明されると「ぐう」の音も出なくなるほど説得されてしまいます。

 しかしそれよりも、実際に走って、効果を体感してもらうほうが説得力は高いように思います。

 本当に記憶力が向上しているのかどうかを実感するのは難しいですが、『脳を鍛えるには運動しかない』で紹介されている「ストレス」「パニック」「依存」に対する効果は、比較的実感しやすいです。

(当たり前のことではありますが、大事なことなので書いておくと、「パニック障害」や「依存症」については、ひとりで本を読んで知識を入れるよりも、お医者さんに直接診てもらったほうがいいと思います。)

 さあ、そうなるともう、走るしかないですね! 記事が長くなりすぎたので「どれくらい走ればいいのか?」「どれくらい走ったのか?」という話は、別の記事として書こうと思います。書かなかったらすみません。