司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

ご冗談でしょう、ランニングマンさん【追記】

※この記事は前回の記事の追記です。

走りたくなった?(^ω^)

ならないよ

なんで?なんでなんでなんで?

えー
筋トレしてるからいいじゃん

有酸素運動してよ…

えー
チャリ通してるからいいじゃん

地に足をつけてよ…

なんで?なんでなんでなんで?

 

 前回に引き続き、実際に友人と交わした会話の再現です。

 なんとなく走りたくならないという気持ちもわかります。年代によるのかもしれませんが、私の場合、小学校のクラブ活動でも、中高の部活動でも、「走らされる」というのは懲罰でした。私も高校時代、部活動の顧問の先生から、縄跳びで「50回連続の二重跳び」に失敗した懲罰として10km走らされたのがトラウマです。

 前回の記事を読んでも走りたくならなかった方のために、走りたくなるような本をまだまだ紹介します。

 

目次

 

どれくらい走ればいいのか?

 その前に、前回の記事の末尾に書いた「どれくらい走ればいいのか?」という問いに答えます。

 前回紹介した3冊は、すべて医学博士の書いた本でした。私は、科学とは「批判可能性を持つもの」だと捉えています。科学であるためには、厳密に前提条件やら再現可能性やらを詳しく書く必要があるため、科学「的」な本のようにズバリと結論を書いてはくれません。

 というわけで、メンタリストDaiGo氏に登場してもらいましょう(すみません)。彼は『超効率勉強法』(学研プラス)のなかで、ズバリこう書いてくれています。

 過去14件の研究をまとめた質が高いデータによれば、海馬を増やすための運動ガイドラインはこのようになります。

1. 軽い運動の場合:1回40分のウォーキングを週に3回、最大心拍数の50〜60%ぐらいで6〜12か月続ける

2. 負荷が高い運動の場合:1回30分〜60分のジョギングまたはサイクリングを週3回、最大心拍数の80%ぐらいで3〜6か月続ける

 ただ、先日、メンタリストDaiGo氏が信者向けのビジネスを しれっと再開したことに対して、「彼の言うことはもう信じられない」と思ってしまった方も多いと思います。

 そんな方のために、ピンポイントでの引用となってしまいますが、『脳を最適化するブレインフィットネス完全ガイド』(CCCメディアハウス)という本にも同様の記載があるので、こちらも紹介しておきます。

Chapter3 健全な脳は、健全な身体に宿る

どんな種類のエクササイズを、どの程度やるか?

(略)量や頻度で言えば、30〜60分のエクササイズを最低週3回行うと良いだろう。

 この本は、見た目のうさんくささとは裏腹に、運動・食事・睡眠・瞑想といった観点から「脳を鍛える(=ブレインフィットネス)」方法を真面目に紹介している本です。今回は深掘りしませんが、またいつか詳しく紹介できればいいな〜とは思っています。

どれくらい走らなければいけないのか?

 ここまでの記載内容によって、「そんなに週に何回も運動したくないよ〜」ってことで、走る意欲を削いでしまったかもしれません。安心してください。前回の記事で紹介した本のなかには、「少しでも走れば効果がある」という例も紹介されています。

 まず、『脳を鍛えるには運動しかない』では、最大心拍数60〜70%でランニングマシーンを使った場合に認識の柔軟性が高まる、という事例を紹介しています。認識の柔軟性とは、連想力や発想力のようなものです。

 次に、『一流の頭脳』では、9歳児が20分間の運動をした場合に読解力が向上する、という事例を紹介しています。この事例が紹介されているチャプターの見出しは「たった一度の運度でいい」です。やさしいですね。

 たった一度でいいんです。どうでしょう、そろそろ走りたくなってきましたか?

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(Pixabayからのイメージ画像)

なぜ走らなければならないのか?

 そもそも、私たちはなぜ走らなければならないのか? 次はそんな視点から、走りたくなるような本を紹介して行きます。

 前回紹介した『脳を鍛えるには運動しかない』の著者であるジョン・J・レイティ博士は、共著で『Go Wild』(NHK出版)という本も出しています。

 前回の記事で私は、進化論的な視点から「なぜ走ることで記憶力が高まるのか?」という説明をしてみました。この本では、それをさらに突き詰めて、食事や睡眠や瞑想といった観点も含めて、私たちが最も高いパフォーマンスを発揮できる方法を多角的に解説しています。

 あまりにテーマが広範なのでまとめにくいですが、その方法をあえて一言でまとめるのであれば、「Go Wild」すなわち「野生的なライフスタイルを取り戻すこと」です。そうだとすると、走るとしても「野生的に走ること」が望ましいと考えられます。というわけで、この本では大自然の中を走る「トレイルラン」を推奨しています。

 この進化論的な考察をさらに突き詰めるどうなるか? 実際に「Go Wild」な生活をしている人々を取材した本が、『Go Wild』のなかでも紹介されている『Born to Run 走るために生まれてきた』(NHK出版)です。

 この本は先の2冊とは著者も違いますし、内容も全然違います。それにしても『脳を鍛えるには運動しかない!』→『野生の体を取り戻せ!』→『走るために生まれてきた!』と、どんどん主張が先鋭的になってきました。

 この本では、3つの旅の物語が複合的に進行して行きます。

 1つ目は、メキシコの山岳地帯に生活していると言われるタラウマラ族を探す旅。タラウマラ族は、2日日で700km(東京〜広島)を走破すると言われている、最強の“走る民族”です。物語はタラウマラ族の消息を知ると噂される「カバーヨ・ブランコ」なる謎の人物を探す場面から始まります。

 2つ目は、著者自身の「走ると足が痛くなる」という悩みを解決するために、様々な専門家のもとを訪れて、その謎を科学的に解明するための旅。この旅の過程で「人間は走るために生まれてきた」という著者の仮説に対する考察が深まって行きます。

 そして3つ目は、(どこまで踏み込んで言っていいのか微妙ですが…)著者がアメリカから最強のウルトラランナーを引き連れて、メキシコの秘境に乗り込んで行って………という旅。この部分がクライマックスで、最もエキサイティングです。

 なかなかにページ数が多い本なので、あまり試験直前に さくっと読める本ではありません。しかし、物語風のルポタージュなので、気分転換にはなるかもしれません。今まで紹介してきた本のなかでも、「走りたくなる度数」は最も高いと思います。今回の記事は、この本を紹介したくて書きました。

なぜ「走る」でなければならないのか?

 私たちは走るために生まれてきたーーこれだけで冒頭のシロクマの質問に対する答えとして十分な気もしますが、もう少しだけ踏み込んで話をします。

 これまで紹介した本の中では「運動」と言う言葉としか記載されていないものを、私はあえて「ランニング」や「走る」という言葉で記載してきました。私がランニングにこだわっているのには理由があります。

 その理由とは、骨です。

 まず、山中伸弥教授がMCを務めたNHKスペシャル「シリーズ人体」を覚えていますか? このシリーズでは、従来の「脳が身体を支配する」という一方向のモデルではなく、新たに「身体から脳に対してもメッセージを送っている」という双方向のモデルが提示されました。

 例えば、脂肪はただの備蓄品ではなく、「満腹だよ!」というメッセージを脳に送る機能を持っています。そのため、生まれつき脂肪がつかない病気(脂肪萎縮症)にかかってしまった子どもは、脂肪から脳に対して「満腹だよ!」というメッセージを送ることができず、親が静止しないかぎり、際限なく食べ続けてしまうことがあります。

 では、骨からはどんなメッセージが送られているのか? 本も出版されていますが、NHK健康チャンネルにもダイジェスト記事が残っていました。

www.nhk.or.jp

 メッセージ形式で書くのであれば「若さを保て!」でしょうか。骨に対して適度な衝撃を与えて、適度に骨が壊されることによって、新たな骨が作られ続けます。その際に骨から出されるメッセージ物質によって、記憶力を高めることができると考えられています。

 このような理由から、私は「筋トレ」や「自転車」よりも、記憶力向上のための運動として「走る」ことが適していると考えています。

走ると最終的にどうなるのか?

 前回の記事の冒頭で村上春樹の話から始めたので、最後も村上春樹の話で終えたいと思います。彼は『やがて哀しき外国語』(講談社)というエッセイ本のなかで、こんなことを書いています。

 長距離を走る人間には退屈で凡庸な人間が多いと言う説がある。僕自身も長距離を走るわけだが、この説にはかなり信憑性があるように思う。たとえばランニングの専門誌の投書欄なんかを読んでいると、確かにこりゃ退屈だなとつくづく感心させられることがある。世の中には数々の専門誌があるけれど、こと文章的退屈さに関してはランニング雑誌はかなりいい線をいっていると思う。歯科技工士の専門誌だって文章的にはもう少しカラフルではあるまいか。

 かなり辛辣ですよね。

 もし私の文章が退屈だと感じられている場合、私が長距離ランナーであることが原因です。反対に、私の文章が退屈だと感じられていない場合、私の走り込みが足りない証拠です。

 みなさんも長距離ランナーになって「あ〜あ、退屈で凡庸な人間になっちまったな〜」と言ってみたくありませんか?

余事記載

 さて、これでキレイに(?)終われるかと思いきや、前回の記事の末尾で、私が「どれだけ走ったのか?」を書く、と予告してしまっておりました。完全に余事記載。けどきちんと書いておきます。

 スマートウォッチなるハイテク機器のGPS機能を使わず、スマホのメモ帳に完走時間をメモしていただけなので、距離については正確ではありません。

  • 集計期間: 2019年12月2日〜2021年5月10日(525日)
  • 走った日数: 156日
  • 1回に走った距離: 約5km
  • 期間内に走った距離: 約780km

 地球1周分くらいは走ったかな〜なんて思って集計を始めましたが、実際には東京〜札幌間(約830km)にも及びませんでした。タラウマラ族2日分。恥ずかしい…

 3.37日に1回、走っていたようです。3日に1回は走ろうと決めていましたから、片頭痛で寝込んでいた日数を考慮すると、こちらはまあ予測通りでした。

 ちなみに司法試験までの期間で集計してみましたが、現在も北大構内を元気よく走っています。もし見かけたらぜひお声がけください!

 

ご冗談でしょう、ランニングマンさん

【読むとよいタイミング】勉強開始直後/勉強が捗らないとき

 

司法試験受かったお(^ω^)

天才じゃん!

あ、いやいや、運が良かったのと、皆様に支えられて…

そういうの大丈夫だから!

あ、あと、勉強法に関する本を読みまくったおかげかと…なんだかんだ60冊も

じゃあ何か1冊教えて!

そうだなあ…一番役に立ったのは『脳を鍛えるには運動しかない』かな

…?

いや、運動とか、したくないのよ
もっと楽ちんにさ、

『脳を鍛えるには運動しかない』

 

 先日、実際に友人との間で交わされたやりとりです。会社の同期や親戚とも、似たようなやりとりを交わしました。(気まずい空気が流れると、次善の策として伊藤真に対する信仰心について熱弁しました。)

 ただ、なんとなく「運動」を避けたくなる気持ちはわかります。私も大学生の頃、すなわち最もデカダンな生活を送っていた頃、村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』を読んで、「やめてくれよ健康オタク」と思いました。私の場合、陽の当たる体育会系な生き方を避けるために日陰の文化系な生き方を選んだので、「運動」とか言われると拒絶反応が出たのです。

 しかし、時は流れ、私も健康オタク側に来ました。合格のために手段は選んでいられません。もし「運動」とか言われて拒絶反応が出てしまう方も、自分の達成したい目標に思いをいたして、まずは気軽にこの記事を読んでみてもらえるとうれしいです。

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(Pixabayからのイメージ画像)

目次

 

『脳を鍛えるには運動しかない』

 私が幼かった頃、「脳細胞は増えないので、減る一方だ」と素朴に信じられていました。そのため、頭をぶつけると「ああ、今脳細胞死んだね」と家族に悲しい眼差しで見つめられた記憶があります。

 ところがどっこい、脳細胞は増えるのです。『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)のサブタイトルには、「脳細胞の増やし方」という、とても魅力的なフレーズが入っています。

 では、どういうメカニズムで脳細胞が増えるのでしょうか?

 運動をすることで、脳由来神経栄養因子(BDNF)というタンパク質が分泌されます。これは「肥料」のようなものです。BDNFによって、脳の神経細胞ニューロン)の発生・成長が促されます。アメーバのようなニューロンから軸索が伸びてシナプス結合するイラストは、理科の授業で見たことがあるひとも多いのではないでしょうか。

 著者のジョン・J・レイティ氏は開業医としても活躍されている医学博士です。正確な知識を得たい方は、ぜひとも彼が書いたものを直接読んでみてください。すみません。

 

 ちなみにこの本では記憶力の向上以外にも様々な効果が紹介されていますが、特に私が好きな部分を少しだけ引用させてもらいます。ここでいう「自己規制」は「セルフコントロール」のことだと思います。

 近年、この見方がオーストラリアの研究者たちによって実証された。彼らは、二四人の学生を対象として、二か月に及ぶ運動ブログラムが自己規制に及ぼす影響を調べた。(略)

 彼らはスポーツジムに通う回数が着実に増え、タバコ、カフェイン、アルコールの摂取量が減り、健康的な食べ物を好み、ジャンクフードを敬遠するようになった。衝動買いや予算オーバーの買物をがまんできるようになり、以前ほど腹を立てなくなった。ものごとを先送りしなくなり、約束をきちんと守るようになった。そして、少なくとも以前に比べれば、使った食器をシンクに入れっぱなしにしなくなった。

 誇大広告じゃないか…?と心配になるほど効果をあげていますが、まあ、運動することを勧めているだけなので、たぶん大丈夫でしょう。私も使った食器を翌日までシンクに入れっぱなしにしなくなりました!(※個人の感想です)

『頭を良くしたければ体を鍛えなさい』

 先ほどの本は、勉強以外にも「ストレス」や「パニック」や「依存」に対する運動の効果について述べられています。私はその部分も大変役に立ったわけですが、たしかに分量は多いです。そこで、もっと薄く、勉強に関する部分だけを取り上げた本を紹介しておきます。

『頭を良くしたければ体を鍛えなさい』(中央公論新社)って『脳を鍛えるには運動しかない』と並ぶ冗談みたいなタイトルですが、こちらの共著者も医学博士と理学博士。真面目な本です。重要なエッセンスを凝縮して紹介していて、イラストも豊富なので、とても読みやすいです。

 ただ、私はこの本を近所の大学生協書籍部で購入したため、一般的な書店に置いているかどうか、自信がありません。現時点でAmazonには在庫があるようです。紀伊國屋さんでは見かけたことがないので、ご注意ください。

『一流の頭脳』

 似たような本を2つ紹介してしまったので、趣の異なるタイトルの本も紹介しておきます。日本でも『スマホ脳』(Amazonリンク)がベストセラーになったアンダース・ハンセン氏の『一流の頭脳』(サンマーク出版)です。

 著者は、スウェーデンカロリンスカ研究所でリサーチャーとして活動していた経験のある精神科医です。(タイムリーな話題として、カロリンスカ研究所と言えばノーベル生理学・医学賞の選考委員会があることで有名ですね。)今年6月には、NTV系列『世界一受けたい授業』に「保健体育教師」として出演されていたので、彼の素敵な笑顔をご覧になった方もいるかもしれません。

 他の2冊と同様、運動が記憶力の向上にどうつながるのか、ということが丁寧に説明されています。この本が他の2冊と違うところとして、「ひらめき」あるいは「アイデア」「クリエイティビティ(創造性)」に関して、運動の効果を丁寧に説明している点です。

 少なくとも私の経験した範囲において、予備試験も司法試験も「ひらめき」が無いと通過できない試験ではない、と感じてはいます(悪く言えば「丸暗記でも乗り切れる」試験だと思っています)。しかし、いわゆる「現場思考」の設問もありますし、問題文の事例がどの条文・論点に関係しているのか、という点に関する「ひらめき」があるに越したことはありません。

余談および私見

 現在『無理ゲー社会』(Amazonリンク)がベストセラーとなっている橘玲さんは、本のタイトルがセンセーショナルなので誤解されがちです(少なくとも私は誤解していました)が、膨大な参考文献に基づいて着実に議論を組み立てる、真面目な本を書いています。

 彼は『「読まなくていい本」の読書案内』(筑摩書房)という本のなかで、この半世紀の間にパラダイムシフトを起こした5つの分野の1つとして「進化論」をあげています。あまりに進化論の説明が説得的なので、旧来のパラダイムで説明されているものについて「とりあえず読まなくていい」のではないかと提言しています。

 すみません、ここまでは余談です。2冊とも面白い本でした。

 では、「運動」と「記憶」の関係について、進化論に沿って説明するとどうなるでしょうか?

 よく知られている通り、脳は他の臓器と比較して圧倒的にエネルギーを使います(重量では約2%にすぎないのに、全体の約18%のエネルギーを消費すると言われます)。動き回らなくていいほど食料が豊富であれば、脳内に膨大なネットワークを形成しないほうがエネルギーを節約できます。

 そして、環境の変化によって食料が得られなくなるリスクもありますから、エネルギーを節約できる個体のほうが、エネルギーを浪費する個体よりも生き延びる確率が高いです。ここまでが、動き回らない人間の記憶力が鈍くなるメカニズムに関する仮説です。

 次に、動き回って食料を探さなければならないような環境に置かれた場合について考えてみましょう。どこに木の実が落ちているか? どこに崖があって危険なのか? どこに肉食動物が潜んでいるか? 記憶すべきことは山ほどあります。

 そうなると、記憶力が高い個体のほうが生き延びられる確率は高まります。結果、自然淘汰により「長距離を走ることで記憶力を向上させる」というメカニズムを持った個体が、そうではない個体よりも生存確率が高かったため、現在の人類の形質として残ったのではないか…

最後に

 どうでしょう? 私は一時期、進化論(特に性淘汰)にハマって色々な本を読みあさっていたので、進化論で説明されると「ぐう」の音も出なくなるほど説得されてしまいます。

 しかしそれよりも、実際に走って、効果を体感してもらうほうが説得力は高いように思います。

 本当に記憶力が向上しているのかどうかを実感するのは難しいですが、『脳を鍛えるには運動しかない』で紹介されている「ストレス」「パニック」「依存」に対する効果は、比較的実感しやすいです。

(当たり前のことではありますが、大事なことなので書いておくと、「パニック障害」や「依存症」については、ひとりで本を読んで知識を入れるよりも、お医者さんに直接診てもらったほうがいいと思います。)

 さあ、そうなるともう、走るしかないですね! 記事が長くなりすぎたので「どれくらい走ればいいのか?」「どれくらい走ったのか?」という話は、別の記事として書こうと思います。書かなかったらすみません。

 

GIVE&GIVE

※この記事は勉強法や司法試験とほとんど無関係です。

 

 先日、オンライン上で“人間”として活動している際に「ペンギンのひとですか?」と声をかけて頂いたのですが、とっさに「いえ、何の話ですか…」と嘘をついてしまいました。すみません。後悔しています。ブログを読んでくださっていたのだとすれば、きちんと感謝の気持ちを伝えるべきでした。こちらから連絡する手段が無いのですが、もしこの記事を読んでくださっていたら、この場を借りてお詫び申し上げます。

 なんとなく「身バレ」するのが怖かったのは、無責任なことを書いて非難されるのが嫌だっただけなのではないか…と思うようになりました。まあ、非難されるのは嫌なので積極的に身バレするようなことは書きませんが、少なくとも声をかけてくださった方には正直に白状することに決めました。(無責任なことは書くかもしれません。)

 さて、身バレした直後、偉そうに勉強法について語るのも恥ずかしいので、今回は趣味の書評を書きます。1週間くらい時間を空けて、また勉強法について書く予定です。今回は『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房)を紹介します。(いや待て、成功について語るほうが恥ずかしくないか…?)

目次

 

恩返し ではなく 恩送り

 少し前の記事で、内田樹さんの本を紹介しました。彼は思想家なので様々な分野について思想を語っていますが、なかでも繰り返し取り上げるテーマの1つに「贈与経済」があります。

 彼が何度も言葉を尽くして語っているようなテーマをここで要約するのは非常に困難ですが、試しにまとめてみます。

・人間は人間との間で、物を「ぐるぐる回す」ことに快感を覚える生き物である。
・貨幣とは、物を「ぐるぐる回す」ことを促すために発明されたものである。
・しかしそもそも、物を「ぐるぐる回す」ためには交換よりも贈与が適している。

(念のため補足しておくと、「ぐるぐる回す」とは、物をコマのように回転させることではなく、甲さん→乙さん→丙さん…と受け渡すことを意味しています。)

 今から10年前の2011年に初版発行された『呪いの時代』(新潮社)という本のなかで、内田樹さんはこんな予言をしています。

 今は夢物語に聞こえるかも知れませんけれど、僕は「交換から贈与へ」という経済活動の大きな流れそのものはもう変わりようがないと思っています。そのうちに、ビジネス実用書のコーナーに「どうすればともだちができるか」「後味のよい贈り物のしかた」というような本が並ぶようになっても、僕は怪しみません。

 それから3年後の2014年、ビジネス実用書コーナーに現れたのが『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』です。少し前に見つけて、読みたいとは思っていたのですが、司法試験が終わって、今後のキャリアを考える段階でようやく読みました。

 この本の紹介に移る前に、『呪いの時代』から次の一節を引用しておきます。「与える人こそ成功する」の結論を先取りしているような文章が出てきます。先ほどの贈与経済の話を踏まえての文章です。

 その人がエンドユーザーであるような人間には誰からも贈与が届かない。贈り物を受け取ったときに、目にも止まらぬ速さで次の贈り先にそれがパスされるような人のところにしか贈り物は届かない。そういうものなのです。

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(Pixabayからのイメージ画像)

自己犠牲 ではなく 他者志向

『GIVE&TAKE』のなかでは、GIVE(与える)がTAKE(受け取る)よりも多いギバー、TAKEがGIVEよりも多いテイカー、両者のMATCH(対等)を重視するマッチャーの3タイプの性質が紹介されています。

 では、どのタイプの人間が成功するのか? 本のタイトルを見ただけで結論は明白ですが、もっとも成功するのはギバーだそうです。では、反対にもっとも失敗するのは? これもギバーだそうです。

 まず、成功の側面。今後ますますギバーが成功する可能性が高い理由として、サービス業に従事するひとの割合が増えていること、および、インターネットで評判情報が共有されやすくなったこと、の2点をあげています。誰だってテイカーとは関わりたくないですから、この側面は納得しやすいのではないでしょうか。

 次に、失敗の側面。これも納得しやすいと思いますが、ギバーはえてしてテイカーの食い物にされます。

 知り合いの士業の方に聞いた話によると、残念ながら、無料で情報だけを得ようとするひとは一定数存在するそうです。知識を武器に商売をする弁護士(に限らず士業全般)にとって、ギバーとして振る舞うことは、テイカーに食い物にされるだけなのではないでしょうか?

 というわけで、この本の大半は「ギバーとして振る舞いながらテイカーに食い物にされないための方法」を紹介することに費やされています。著者のアダム・グラント氏はビジネススクールで教鞭をとる組織心理学者なので、様々な実験やインタビューをもとに実証的な思考が行われています。

 1つだけ、自分が今までに書いた記事と関連しそうな話があるので、紹介します。私は以前、ひろゆき氏の『1%の努力』の書評らしきものを書いたことがあります(我ながらミーハーだなあ…)。

article23.hatenablog.jp

 そのなかで、複数回の囚人のジレンマゲームおけるTFT戦略(しっぺ返し戦略)というものを勧めたのですが、あれは典型的なマッチャーの戦略です。やられたらやり返す。そしてこの記事では「TFT戦略こそ最強!」と無責任なことを書いたのですが、どうやらもっと強い、ギバーの戦略があるようです。

 ただし、しっぺ返しは与えることと相手に合わせることを、交互に繰り返すほうが有利なことがわかっている。これを「寛大なしっぺ返し」という。「寛大なしっぺ返し」のルールは「よい行いはけっして忘れず、悪い行いをときどき大目に見る」ことだ。(略)

 寛大なしっぺ返しでは、三回に二回は張り合うが、三回に一回は協力的な態度で応じるのである。「寛大なしっぺ返しは、しっぺ返しを簡単に帳消しにすることができるうえ、食い物にされることからも守ってくれる」と、ハーバード大学の数理生物学者のマーティン・ノバックは書いている。

(英文を読んでいないので推測ですが、「張り合う」という翻訳は、「前回のゲームで非協力だった相手に対して、非協力な戦略で報復すること」を意味していると思われます。)

書評 ではなく 鬼滅の刃

 最後に。

 毎回『鬼滅の刃』の話をしないと気が済まないのか!と言われそうですが、毎回『鬼滅の刃』の話をしないと気が済まないので、『鬼滅の刃』の話をします。というか、このセリフを引用したくて長々と書いてきました。

 先日、ついに地上波初放送となった「無限列車編」では、幼き日の煉獄さんに対して、母がこんな言葉をかけるシーンが出てきます。

なぜ自分が人よりも強く生まれたかわかりますか

弱き人を助けるためです

生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者は

その力を世のため人のために使わねばなりません

天から賜りし力で人を傷つけること私腹を肥やすことは許されません

 私は煉獄さんのように強く生まれたわけではないですが、ひとのアドバイスを素直に受け入れる才能に恵まれて、司法試験を通過することができました。受け入れすぎて失敗したこともありますが、成功した勉強法については誰かの役に立てたらいいなと思って書いています。

 というわけで、しつこいですが、次回は勉強法の話を書きます。