司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

司法修習生の刑事事件は明日で待ってる

【読むとよいタイミング】修習開始前〜修習終了まで

 

 弁護士登録をして3週間ほどが経過しました。このブログは今後どうしようかな〜などと考えないこともないのですが、とりあえず「修習中に読んだ本を紹介する」シリーズを終わらせるまでは続けます。

 まずは刑事系科目です。

 地域ごとに異なるらしいのですが、私が実務修習をした土地では「新人でもいきなり1人で国選弁護人を担当させられる」と聞いていました。ビビりますよね。

 どこで弁護士登録するかはさておき、民事事件よりも刑事事件のほうが独り立ちさせられるのが早いことは間違いなさそうです。なので、刑事系科目は、危機感を持って、比較的まじめに勉強していました。

 コンメンタールや書式集など、修習中に参照した本はたくさんあるのですが、とりあえず、通読した本に限定して紹介しようと思います。

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目次

『刑事弁護の基礎知識』

 まずは『刑事弁護の基礎知識』(有斐閣)です。Twitter上で「この本を白表紙にして配るべき」という意見を見たことがあります。私も同感です。重要な基礎知識はひと通り書いてあります。

 起訴前の弁護活動から公判活動まで、条文や判例の知識が網羅的に解説されているので、裁判官や検察を志望する修習生も読んでおいて損はないと思います。また、後に触れる「量刑」についても、厚く解説されています。

 ただ、個人的には、冒頭部分の「弁護士倫理」(刑事弁護人倫理?)のパートが最も読む価値のある内容だと思いました。共感できるかどうかはともかく、刑事弁護に携わっている方々がどんな思考をするのかを知っておくことが、集合修習の起案や二回試験の起案に直接役立ちます。

裁判員裁判における量刑評議の在り方について』

 学習意欲を削ぐようなことを言って恐縮ですが、「二回試験を乗り切る」という観点からは、受験生の頃に勉強した刑法や刑事訴訟法、刑事実務基礎科目の知識だけで十分間に合うと思わなくもないです。事実認定も、民事系科目ほど複雑ではありません。

 ただし、受験生の頃に唯一勉強していない領域が「量刑」です。

 勉強していないにもかかわらず、実務上は最も重要と言っても過言ではありません。1人の人間の今後の人生を決めるわけですから、当然です。

 実務修習中、裁判所でも検察庁でも弁護士事務所でも、指導担当から「この事件、何年だと思う?」と聞かれました。「執行猶予はつくと思う?」「起訴されると思う?」などのバリエーションもあります。最初のうちは全く何も答えられなくて焦りました。

 前置きが長くなりましたが、量刑を学ぶために一番役立ったのが『裁判員裁判における量刑評議の在り方について』(法曹会)です。

 私が勝手にこの本をパート分けすると、①量刑判断の考え方、②今後の判決書に対する提言、③死刑、の3つに分かれます。このうち、②と③は読み物として面白いですが、修習には役立たないかもしれません。

 ①パートでは、量刑の判断枠組みと、量刑を決める上での着眼点が網羅的にわかりやすく解説されています。残念ながら、読んだからって具体的に「懲役12年だと思います!」などと答えられるようになるわけではありません。ですが、少なくとも指導担当のみなさんと量刑について議論できるようになるはず。

余談:添削するなら刑事系科目で

 さっき書いたことを少し補足します。二回試験の話です。

 細かい例外はありますが、おおむね、刑事裁判の小問では、勾留・保釈や刑事裁判手続の知識が問われます。検察の小問では、捜査やら伝聞やら幅広く問われますが、判例の知識が中心です。刑事弁護の小問では、弁護士倫理と量刑が問われます。

 他方、民事系科目は事情が異なります。民事裁判の小問では、実務的な民事裁判手続の知識が問われます。そして民事弁護の小問は、①執行・保全、②和解、③証拠収集の3本柱です。執行・保全は予備試験レベルの知識では不十分ですし、和解も証拠収集も修習で初めて学ぶ知識です。残念ながら、新たに勉強するしかありません。

 というわけで、結局何が言いたかったかというと、「添削のアルバイトをするなら、刑事系科目がオススメ!」という話です。日常的に記憶喚起しておくと、二回試験前に慌てて復習する必要がなくなります。

 ちなみに私は検察修習の即日起案で、その前週に添削した問題の事案と、素材となった判例が全く同じ事案が出たことがあります。「これ、進研ゼミでやった問題だ!」状態で起案することができました。

『刑事事実認定重要判決50選』

 さて、通読したまじめな本は、さっきの2冊だけです。ふざけた話に行く前に、もう1冊だけまじめな本を紹介しておきます。「通読した本を紹介する」と宣言しておきながら半分も読まなかった本を紹介するのは憚られますが、『刑事事実認定重要判決50選』(立花書房)です。

 この本は、テーマごとに裁判例を取り上げながら「判断枠組み(規範)」と「法的評価(当てはめ)」が紹介されています。

 私のクラスの検察教官は、集合修習の講義で「みんな、読んでいて当然だよね!」と言い放っていました。実際、検察志望の同期はきちんと通読していたようです。集合修習の起案の出来が突き抜けていました。

 さすがに私は通読しませんでしたが、「殺意」とか「急迫性」とか「共謀」とか「供述の信用性」とか「犯人性の総合評価」とか、修習中の起案も直接役立つテーマもあるので、その辺は志望に関係なく読んでおいたらいいと感じました。

『刑事弁護人のための隠語・俗語・実務用語辞典』

 さて、ここまでは修習に役立つ本の話でした。ここから先は、正直、修習には役立たない本を紹介します。まずは『刑事弁護人のための隠語・俗語・実務用語辞典』(現代人文社)です。

 書名には「刑事弁護人のための」と付されていますが、本来読むべきは検察官志望の修習生じゃないかと思っています。まあ、こんな本を読まなくても1年目で自然に学べてしまうのかもしれませんが…

「にんべん」「ごんべん」「ゆみへん」「さんずい」…それぞれ何の犯罪を指しているかわかりますか? 実務修習中、供述調書とかを読んでいると、意外と遭遇します。知らなくても問題ありませんが、知っていると、記録を読むのが少し楽しくなるかもしれません。

 まあ、修習とか関係なく、もし「裏社会もの」の小説とか漫画とか映画が好きだったら、解説を読んでいるだけで楽しいと思います。不謹慎ですが、個人的には「寝る子は育つ」の解説が一番笑いました。

『九条の大罪』

 さて、裏社会ものの漫画と言えば、『闇金ウシジマくん』。その作者の最新作が『九条の大罪』(小学館)です。

 主人公の九条間人は、反社などの「裏社会の住人」を主な顧客とする弁護士。父が大物弁護士、兄はエリート検事、本人も凄腕の弁護士です。九条の事務所には、大手弁護士事務所から移籍してきた若手イソ弁も在籍。九条のもとには様々なトラブルを抱えた依頼者が訪れて来て……と、もうこの設定だけでわくわくしてきますね。

 2022年12月現在、7巻まで発売しています。6巻まで母に貸したところ、母がハマってしまい、最新刊も母が買い足したらしいので、私はまだ読んでいません。

 九条弁護士の主な顧客は裏社会の住人。なので、接見室でヤクザ屋さんから「先生、ちょっとスマホ貸して?」と言われた時の対処法が学べたりします。

 そういった実践的知識が学べるのも良いんですが、そもそも「なんで、悪人の弁護ができるのか?」という問いを考える良いきっかけになるような気がします。

 例えば、最近の6巻では、九条弁護士と嵐山警察官の次のようなやりとりが出てきます。

九条:弁護士が守ってるのは悪人ではない。手続きを守っている。

嵐山:手続きだと? どうゆう意味だ。

九条:あんたら警察には理解されないだろうが、適正な刑事手続きを進めてる。

嵐山:反社の犬が詭弁並べやがって。

 本当はこれに続くセリフのほうが好きなんですが、重要なネタバレを含んでいるので書かないでおきます(悪質な誘導広告みたいですね。すみません)。

『なんで、「あんな奴ら」の弁護ができるのか?』

 私は心が狭いので、ルールを守らない人間が苦手です。他人に迷惑をかけるような人間は( 自主規制 )だと本心では思っています。

 しかし、諸般の事情から、仕事としては刑事事件にも携わりたいと思っています。なので、実際に仕事をし始めたらおそらく葛藤を抱えるに違いない…

 というわけで、二回試験直後から『なんで、「あんな奴ら」の弁護ができるのか?』(現代人文社)を読み始めました。アメリカで刑事裁判に長年携わってきた方々がオムニバス形式で書いたエッセイ集のようなものです。

 できれば「この本を読んでスッキリしました!」と言いたいところですが、すみません、実はまだ半分くらいしか読んでいません。意外と刑事事件に携わるのはもう少し先の話のようなので、今は慌てて交通事故処理や破産処理などを勉強しています。

 冒頭で「通読した本を紹介する」と宣言しておきながら、読みかけの本を紹介するのは大変恐縮ですが、ぴったりのテーマだったことと、今のところ良い本だと思ったので紹介させてもらいました。

 読み終えたらTwitterとかで感想を書くかもしれません。

 

 期せずして大晦日の更新となってしまいました。こんな日に最後まで読んでくださった方がいたら、ありがとうございました。

 2022年は個人的に大変な一年でした。2023年は健康に恵まれ、皆様にとっても素敵な一年となることを祈っています。

 

司法修習生、受動態やめるってよ

【読むとよいタイミング】修習開始前〜修習終了まで

 

 75期の司法修習は、導入修習・集合修習ともオンライン形式でした。従来のアナログ修習では、和光の司法研修所に参集したクラスの仲間同士で起案をコピーして配ることによって、起案能力を高めていたらしいです。

 しかしまあ、オンライン形式だとなかなかそれも難しかろう…ということで、75期の場合、クラスの教官が、修習生60名程度の中から3~5通程度「参考起案」を選び、それをスキャンして配布してくれていました。

 教官によっては参考起案の配布がない科目もあったのですが、私の起案は、合計5回、参考起案に選んでもらいました。

どやっ

 そんなに選ばれたならば、多少ドヤ顔で文章術について語ってもバチが当たらないのでは…と思い、文章術に関する記事を書いてみることにしました(とはいえ、ジブン流の文章術を語ったりしないのでご安心ください)。

 以前、一般的な文章術に関する記事を恥ずかしげもなく書いてみましたが、今回は、法律文書に関する本の紹介です。修習中に読んだ本の中からオススメの4冊を、入手しやすい順に並べてみました。

article23.hatenablog.jp

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目次

『法律文書作成の基本』(入手困難度☆☆☆)

 まず紹介するのは、『法律文書作成の基本』(日本評論社)です。著者は元裁判官で弁護士の田中豊先生。有名な本なので、今さら私が紹介するまでもないかもしれません。実務修習地の小さな本屋さんにも置いてありました。

 この本が優れているところは、「法律文書作成」と銘打っておきながら、文章術に関する内容だけではなく、訴訟手続の流れを丁寧に解説している点です。訴訟手続どころか、法律相談の段階から解説が始まります。

 そして、訴状、答弁書準備書面、判決書…と、修習に直結する法律文書が取り上げられているため、修習中の起案にも直接役立ちます。実務修習の予習にも復習にもなるので、どこかの段階で読んでおくことをオススメします。

 ちなみにこの本、479ページもあってビビるかもしれませんが、最後のほうはサンプル(実際の起案例)なので、読むべき中身は実質375ページ分です。契約書作成のパートを除けば、301ページしかありません。読みやすい文章ですし、ビビらなくて大丈夫です。

 ただ、修習中の起案には直接関係しないかもしれませんが、契約書作成のパートも大変勉強になります。担保責任や無催告解除や損害賠償請求など、民法の復習にもなるので、余裕があれば375ページ分はぜひ…

『起案添削教室』(入手困難度★☆☆)

 次に紹介するのは、『弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室』(学陽書房)です。弁護修習先の事務所に置いてあったので、指導担当の先生にお借りして読みました。私の実務修習地の県内の本屋さんには1冊も在庫がなかったので、入手困難度は星1つ。

 この本は、タイトルからもわかるように、弁護士という「書く」立場から本文が書かれていて、1章ごとに、裁判官という「読む」立場からの補足コメントが加えられる形で進んでいきます。

「添削教室」と言うだけあって、NGな起案例と、それを改善した起案例も掲載されています。そのため、具体的なイメージがつかみやすく、自らの起案の改善にも活かしやすいです。ただ、私はそれ以上に、読み物として面白いと感じました。ふだんは水面下にある「裁判官の苦悩」を垣間見ることができる点も、貴重だと思います。

 また、この本は『法律文書作成の基本』と異なり、取り上げている文書の種類が独特です。例えば「刑事事件の被害者に送る手紙」「依頼者に対して辞任を申し出る際の書面」など、実用的(?)なチョイスになっています。そのような特徴も、読み物としての面白さを高めていると感じました。

『訴訟の心得』(入手困難度★★☆)

 以前にブログで紹介したことのある本ですが、なぜか“就職活動”というテーマの記事で紹介してしまったので、ここで改めて紹介します。企業法務の第一人者・中村直人先生が書いた『訴訟の心得』(中央経済社)です。

 この本は2022年4月時点で「出版社在庫切れ」となってしまっていました。幸いにも電子書籍化されていたので、私はkindle版で読みました。

 そもそもこの本は文章術について書かれた本ではありません。起案について書かれているのは、全8章のうち、1章分だけです。すみません。

 それでもあえて勧めているのは、私が中村直人先生の本のファンだから…というだけでなく、この本で学んだ事実認定の考え方や、証拠の使い方、事件のストーリーの捉え方が、修習中の起案に役立ったと感じているからです。

 まあ、そうじゃなくでも、中村直人先生の文章を読むこと自体が一番の文章術の勉強になるのではないか……なんて言い始めたら何でもアリになってしまいますね。すみません。

『訴訟に勝つ実践的文章術』(入手困難度★★★)

 最後に紹介するのは、『訴訟に勝つ実践的文章術』(日本評論社)です。アメリカの訴訟弁護士が書いた本を、日本の弁護士が翻訳したものです。

 私はこの本を裁判所の資料室で見つけました。内容がすばらしかったので購入しようと思ったものの、新品での購入ができず、電子書籍にもなっていませんでした。やむなく、私は中古で購入しました…

 …が、先日、司法研修所敷地内にある至誠堂書店で1冊だけ在庫があるのを発見しました!

 75期の場合、二回試験期間中しか司法研修所に立ち入れず、しかも書店が試験時間中しか営業していないため、「二回試験を途中退室しない限り入店できない」という過酷な条件付きでした。RPGの隠れ里にある武器ショップでしか買えない幻のアイテムみたいですよね。

 この本には、まさに文章術、具体的なテクニックが多数紹介されています。「受動態ではなく能動態で書く」「事実から議論を組み立てる」「仮定的な議論をしない」「同じ内容を指すには同じ言葉を用いる」などなど、すぐに使いたくなるテクニック満載です。

 ただし、原著は20年以上前に海外で書かれたものなので、さすがに令和の世の中では通用しないテクニックも載っています。まあ、そういう歴史的記述も含めて、最後まで楽しく読める内容になっていると個人的には思います。

「悪い文章」で書いた雑談

 結局、良い文章って何なんでしょう?

 だいたいどの本にも共通して書かれていたのは「一義的な文章」です。そのための手段として「短い文章」が推奨されていました。「主語と述語をハッキリさせる」というのも、文章を一義的にする手段です。

 ところで、日本語には「正反対の2つの意味を持つ言葉」が存在します。「適当」という言葉には、「適切」という意味と、その正反対の「いいかげん」という意味があります。デートに誘った相手から「大丈夫!」と言われても、「OKです」という意味なのか、正反対の「遠慮しておきます」という意味なのか、正しく読み取らなくてはいけません。最近の言葉だと、「ヤバい」なんかも、正反対の意味を持ちます。

 こういう種類の言葉は、正しいコミュニケーションを阻害するだけなので、淘汰されて無くなってもおかしくないですよね。しかし、世界中、どの言語にも存在するそうです。もちろん、社会を成り立たせるために必要な機能があるからです。

 はたして、どんな機能があるのか?…なんて語り出すと長くなるのでやめておきますが、文学的に優れた文章とは、こうした多義的な言葉を上手に使いこなす文章だと考えています。そうでなければ、何万人もの共感を得られるような物語は書けません。

 他方、法律文書では、共感を得ることよりも、まずは情報が正しく伝わることのほうが優先されます。そう考えると「文学部的な良い文章≒法学部的な悪い文章」「文学部的な悪い文章≒法学部的な良い文章」なんて等式が成り立つのではないか…と思えてきました。

 おそらく文学部出身(あるいは小説好き・評論好き)の方には、自分の書く文章に意識的な方が多いと思います。「文学部出身だから法律の論文式試験は不利なんじゃないか?」と考えている方がいたら、そんなことない、むしろ強みになるかもしれない、ということを伝えたいです。

 …いいかげん(これも正反対の意味を持つ言葉ですね)、長くて何が言いたいかわからない「悪い文章」になってきましたね。この辺でやめておきます。

 

蒼ざめた修習生を見よ 〜事前課題篇〜

【読むとよいタイミング】修習開始前

 

 司法試験に合格した喜びも、うたかたの夢。いきなり希望もしていない実務修習地に飛ばされることになって、大量の資料が段ボールで送りつけられて、事前課題の提出が命じられる。就活もしなければならない。私も昨年の今ごろ、なかなかメンタルが削られていました。

「事前課題なんて提出さえすればOK」「ロースクールの友達に写させてもらった」みたいな話も聞きます。そういう方にとっては、どうでもいい話かもしれません。他方、司法修習生の知り合いが皆無で、ただただ不安を募らせているような方もいるのではないかと思います。

 というわけで今回の記事は、事前課題の思い出を少し紹介しつつ、「通読しておいたら気が楽になる白表紙」を紹介するのが目的です。

 ただ、そもそも事前課題の内容は機密情報ですし、75期の事前課題と76期以降の事前課題が同じとは限らないので、直接的には役に立たないかもしれません。以下、すべてにおいて「75期と同じであれば」という注記が必要なのですが、まあ、いちいち書いてはいません。あらかじめご了承ください。

 ちなみに、次回以降、修習中に読んだ一般書籍の中でオススメのものを紹介する「民事篇」「刑事篇」と、起案の注意点に関する「二回試験篇」を書こうかと考えています。途中で飽きたらすみません。

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目次

検察:『終局処分起案の考え方』(全69ページ)

 事前課題の中で最も重たいのが、検察だと思います。私は通算で11時間程度かかりました。

 検察起案は、良くも悪くも「起案の型」が決まっているので、とにかく覚えるしかありません。その他にも細かいルールがたくさんあるので、とにかく慣れるしかありません。実務修習中に作成する各種資料も、これらの「お作法」に拘束されるので、この機会に『考え方』を読んでおいて損はないです。

 なお、『検察講義案』という白表紙は、実務修習中の問研起案や集合修習中の即日起案でも持込みが可能です。どこにどんなことが書いてあるのかをパラパラ眺めておくといいと思います。ただし、書込みがあると持ち込めなくなるのでお気をつけください。

(2022/11/20追記)

 二回試験では、『検察講義案』のうち、一部(略語表、起訴状サンプル等)を抜粋した小冊子が配られました。

民裁【事実認定】:『事例で考える民事事実認定』(全119ページ)

 検察の次に重たかったのが、民事裁判。通算で9時間程度かかりました。

 事前課題に限らず、民裁の起案では事実認定と主張整理という2つの作業をしなければならないので、他の科目よりも負担が大きいです。二回試験でも、民裁で落ちる司法修習生が多いと聞きます。今のうちから勉強しておいても、無駄にはならないのではないでしょうか。

 まずは、事実認定について。『事例で考える民事事実認定』(通称:ジレカン)は、普通に本屋さんでも売っている本です。司法修習生以外がこのブログ記事を読んでいるとも思えないですが、大きい紀伊國屋さんにはだいたい置いてあるので、もし興味があったら見てみてください。

 ジレカンでは、民事裁判の事実認定の判断の枠組みが紹介されています。

① 直接証拠である類型的信用文書があり、その成立に争いがない

 → 特段の事情を検討

② 直接証拠である類型的信用文書があり、その成立に争いがある

 → 文書の成立の真正を検討

③ 類型的信用文書はないが、直接証拠である供述証拠がある

 → 供述の信用性を検討

④ 直接証拠がない

 → 間接事実を検討

 この4つは、今のうちに暗記しておいて損はないと思います。実務修習で裁判記録を読む際の「基礎」にもなりますし、起案ではほぼ必ず書かされます。

 そして、第二弾の紙爆弾では『学修用手引』なるプリントが送られてきます。これを74期以前の方がTwitterで「起案の型」として紹介しているのを見ました。個人的には、改行方法の美的感覚が合わないので「型」としては参考にしていませんが、起案に書くべき内容がわかる点でとても参考になります。

民裁【主張整理】:『新問題研究要件事実』(全146ページ)『紛争類型別の要件事実』(全154ページ)

 続いて、主張整理の話。すなわち、訴訟物とか要件事実の話です。好き嫌いがあると聞きますが、個人的には「パズルみたいで楽しいなあ」と思って勉強しています。

 主張整理の話は、事前課題との関係では必要ない話かもしれませんが、少しだけ白表紙の話をします。私は『新問題研究要件事実』(通称:新問研)を、予備試験の口述前に通読していました。この本も、大きい紀伊國屋さんにはだいたい置いてあります。

 新問研の内容だけでは心許ないですが、反対に、新問研の内容くらいは完璧に理解しておきたいところです。謎に文字が大きくて1時間くらいあれば通読できる量になっていますので、もし読んだことがなければぜひ通読しておくことを勧めます。

 もう1つ送られてくるのが『紛争類型別の要件事実』(通称:類型別)です。予備試験の口述前にこの本を読む受験生も多いと聞きます。私は口述前に『完全講義 民事裁判実務の基礎』(通称:大島本)のほうを通読していました。

 なので「類型別は読まなくていいかな〜」と思っていたのですが、最近、改心して読み始めました。コンパクトにまとめられていて、読みやすいです。副題にあるとおり、「攻撃防御方法の構造」が図でまとめられている部分が大変有益です。

刑裁:『刑事事実認定ガイド』(全51ページ)

 3番目に重たかったのが、刑事裁判。通算で6時間程度かかりました。

『刑事事実認定ガイド』では、事実認定に関する基本的な考え方(直接証拠型 or 間接事実型)のほか、供述の信用性を検討する際の着眼点が紹介されています。

① 他の証拠による裏付け・符合

② 知覚・記憶・表現の条件

③ 供述経過

④ 供述者の立場(利害関係)

⑤ 供述内容の自然性、具体性、迫真性等

⑥ 供述態度

 この6つは、今のうちに暗記しておいて損はないと思います。刑事系3科目で共通するものですし、実務修習でも指導担当から繰り返し問われました。

刑弁:『刑事弁護の手引き』(全26ページ)『みんなでつくるケース・セオリー』(全52ページ)

 刑事弁護は、事前課題がありません。弁護科目は実務修習中の問研起案もないですし、それだけで愛せますよね。

 ただ、もし余裕があるなら「ケース・セオリー」という言葉に対する抵抗感をなくしておいたほうがいいのではないかと感じます。なかなか捉えどころのない概念です。正解は“みんな”の心の中にしかないのではないか…と思えてしまいます。ちなみに私は「裁判官や裁判員を説得するための、わかりやすい物語」という風に理解しています。

 刑事弁護は白表紙以外の一般書籍で名著が充実していますから、それはまた別の記事で紹介しますね。

民弁:なし

 民事弁護は、執行・保全と和解に関する、ちょっとした事前課題があります。3時間程度で終わる内容でした。それぞれ対応した白表紙の記載を参照するだけなので、おそらく精神的にも負担はないと思います。

 民事弁護に関してもオススメの一般書籍がいろいろあるので、また別の記事で紹介しますね。

その他:司法修習ハンドブック(全29ページ)

 というわけで、資料の整理の時間も含めると、事前課題にかかった時間は通算30時間程度でした。多いような少ないような。

 先日、Twitterで「通読をオススメする白表紙」を紹介する際に、半分冗談のつもりで『司法修習ハンドブック』も載せてみたんですが、特に誰からもツッコミがありませんでした。まあ、欠席日数に関しては厳格なルールがあったりしますから、冗談抜きにルールを頭に入れておいたほうがいいかもしれません。

 そして、欠席日数も重要ですが、その他の罷免事由も重要です。特に、機密情報の取扱いについては、注意しても注意しすぎることはないでしょう。

 私も、今回の記事を書くうえで(書くかどうかを含めて)とても悩みました。まあ、機密情報に触れるようなことはしていませんし、「まじめに事前課題やろうぜ!」というテーマの記事なので、司法研修所から怒られるようなことはないのではないかと信じています。

 …なんて言いつつ、数日後には消している(あるいは、存在ごと消されている)かもしれません。ここまで読んでくださった方がいれば、私が二回試験前に罷免されないことを一緒に祈ってもらえるとありがたいです。