司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

「この点」の耐えられない軽さ

【読むとよいタイミング】論文を書く段階

 

 ずいぶん昔に、斎藤美奈子さんの『文章読本さん江』(筑摩書房)を読みました。そのあとがきに、「さん江」と書かれた花輪には爆弾が仕掛けられていそう、と書かれていたことをうっすら覚えています。おかげさまで今でも、人様に偉そうに文章の書き方なんぞ教えたら爆破される、というイメージが恐怖とともに植え付けられています。

 しかし、司法試験が一段落した今、偉そうに文章の書き方について書くという誘惑に抗えなかったので、今回は論文答案の書き方についての備忘録を残そうと思います。

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(Pixabayからのイメージ画像)

目次

 
1. 『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた』(藤吉豊・小川真理子/日経BP

 タイトル通り、ポイントがランキング形式で40位まで紹介された本です。司法試験の論文に直結するか、と問われると微妙ですが、1位「文章はシンプルに」、2位「伝わる文章には型がある」などは司法試験の論文を書く上でも絶対に守るべきルールと言えるでしょう。

2. 『新版 論理トレーニング』(野矢茂樹/産業図書)

 ヴィトゲンシュタイン研究の第一人者による、論理力を特訓するための演習本。ただ、ヴィトゲンシュタインの「ヴ」の字も出てこないので、安心してください。随所に設例が設けられ、読みやすい本ではありますが、あまり時間的な余裕が無い場合には、序盤の「論理」と「接続」の部分だけでも読むことを勧めます。

3. 『法を学ぶ人のための文章作法 第2版』(井田良・佐渡島紗織・山野目章夫/有斐閣

 司法試験に直結するか、と問われると、自信を持って「直結する」と即答できる本です。

 井田先生の執筆部分である、法律的な文章を書くための基礎知識も大変勉強になります。しかし個人的には、山野目先生の執筆部分で、受験生の変な日本語表現にツッコミを入れる箇所が一番おもしろく、有益でした。具体例として以下のような文章を紹介し、「これには唖然とする」とコメントしています。
 

本文の被告である債務者は、本件取引当時、認知症が進行していたから、意思無能力であった可能性があり、その効力がどうなるか、明文なく問題となるも、無効であると解する。 

 
 「明文なく問題となる」「無効であると解する」など、私も司法試験の勉強を始めた当初、市販の再現答案を読んで「法学部には変な日本語の文章作法を教える講義でもあるのかな?」と不思議に思ったものですが、そういうわけではないようですね。この本を読めば正しい文章作法が身につくと思います。

4. 『元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術』(吉田利宏/ダイヤモンド社

 さらに初歩的な文章作法として、「又は・若しくは」「及び・並びに」「その他・その他の」などの使い方すら知らなかった私にはこの本も大変勉強になりました。

 たまに他の受験生の答案のなかに、「場合」と「とき」を正しく使えていないものを見かけます。心当たりのある“場合”、余裕のある“とき”、ぜひ読んでみてください。(さらに細かいですが、「者」と「もの」はきちんと使い分けられていますか?)

5. 補足

 以上の本で紹介されていたことなどを踏まえて、私が論文答案を書く上で気をつけていた点を少しだけ紹介します。

 

・順接の「が」は使わない。「が」を使うのは逆接の場合のみ。
・「なお」は前後の文章を論理的につながないので、極力使わない。
・「この点」は書くだけ無駄なので、使わない。

 

 ちなみに(←これもあんまり論理的な接続詞ではないですね)、順接の「が」と逆接の「が」とは以下のようなものです。

 

私はカレーが好きだが、なかでもインドカレーには目がない。
私はカレーが好きだが、インドカレーはあまり得意ではない。

 

 接続詞は読み手に対して「この次はどんな文章が続くのか?」という予測可能性を与えるものですから、極力、読み手に思いやりのある答案を書けるようにしましょう…なんて偉そうなことを書き始めたら爆弾が届きそうなので、この辺でやめておきます。