司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

否認事件しかないわけないでしょう

【読むとよいタイミング】司法修習〜弁護士1年目

 

 先日、Twitterに「一回結審の認め事件の刑事裁判手続の流れ(例)」という画像をアップしたところ、今日までの時点で433イイネしてもらえました。私のツイートにしてはけっこう多いほうです。

 それよりも、356ブックマークという数字に驚きました。私のツイートにしてはかなり多いです。「後でまた見返したい」と思ってもらえる情報だった、という意味に受け取りました。

 というわけで、Google検索でも辿り着けるように、ブログにも同じ画像を貼っておきます。その後に、少しだけ、補足の文章があります。

 

・JPG版「一回結審の認め事件の刑事裁判手続の流れ(例)」

一回結審の認め事件の刑事裁判手続の流れ1一回結審の認め事件の刑事裁判手続の流れ2

一回結審の認め事件の刑事裁判手続の流れ3

・PDF版「一回結審の認め事件の刑事裁判手続の流れ(例)」

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(pixabayからのイメージ画像)

目次

この表の作成に至った経緯

 私の飛ばされた修習地は修習生6名の限界修習地でしたので、選択型修習なのに、選択の余地なく全員強制参加で模擬裁判をやらされました。なぜか裁判所長や次席検事、弁護士会の会長まで傍聴に来るビッグイベントでした。

 修習生の頃は、裁判所を神聖な場所のように感じていましたし(今は良い意味で「役場」だと割り切っています。)、ミスしてはいけないような緊張感が漂っていたため、事前にきちんと台本を作って臨みました。

 白表紙の『プロシーディングス刑事裁判』には、冒頭手続についての詳細な台本が掲載されています。が、証拠調べ手続において、検察官請求証拠にどうやって意見を述べるのか、弁護側の立証をどのように進めるのか、といった部分の台本は掲載されていません。

 特に「どのタイミングで誰が誰に何を渡すんだっけ?」ということがわからなくて困った記憶があるので、表の中では太字にしてあります。

 刑事手続の本も、修習中の白表紙も、基本的には否認事件を題材にしています。特に、裁判員裁判の手続を重点的に学ぶことが多いかもしれません。しかし実務に出ると、一回結審の認め事件がほとんどです。

 私は弁護士登録してから、弁護士会から割り振られる標準的な回数の国選やら当番やらを担当していますが、いまだ否認事件に当たったことがありません。一部否認すらありません。

 そんなわけで、修習生や弁護士1年目の頃に、こんな表があったらいいのになあ、と思った「一回結審の認め事件の刑事裁判手続の流れ(例)」を作りました、とさ。

関係する書籍その1

 もともと自分用のメモとして作ったものだったので、表の中に何の説明もなく「異議マニュアルを手元に置いてスタンバイ」と書いてしまっていました。

 少し古い本のようですが、大阪弁護士会が『実践!刑事弁護異議マニュアル』という本を出版しています。

 この本は、尋問中にどんな場面に遭遇したら異議を出せばいいのか、ということが具体例とともに解説されているほか、冒頭手続や証拠決定の際の異議の出し方についても解説されています。

 この本の付録に、A4の両面に「異議の理由(条文)」と「異議の言い方」が網羅的に記載された厚紙みたいなものがついています。「異議マニュアルを手元に置いてスタンバイ」というのは、この紙を手元に置いておこう、ということを示しています。

関係する書籍その2

 冒頭の画像をTwitterで紹介したところ、「同様の表が載っている」ということで『こんなときどうする 刑事弁護の知恵袋』という本を紹介してもらいました。

 たしかに同様の表はありましたが、10ページものボリュームでした(p.83〜p.93)。3ページにまとまっていたほうが、スッキリしていて見やすくないですか?

 …なんてどうでもいい対抗心はさておき、この本、とても良い本でした。

「被疑者から預金を引き出してほしいと言われた時にどうする?」とか、「在宅の被告人と連絡が取れなかった時にどうする?」とか、おそらく1年目から遭遇するであろう様々な「あるある」状況に対する対処法が載っています。

余談

 話は本題から脱線しますが、手を尽くしても在宅の被告人と連絡が取れなかった時、どうしたらいいと思いますか?

 一応、先ほど紹介した本にもそれらしい対処法は載っていますが、究極的には「どうしようもない」です。だって連絡取れないもんは連絡取れないんだもん。

 ただ、こういう本を読んで「どうしようもないもんはどうしようもないよなあ」ということがわかるだけでも、少しだけ気が楽になります。それに加えて、どうしようもない状況に遭遇した際の「身の守り方」が学べます。

 弁護士って、どうしようもない状況に不可避的かつ定期的に遭遇し、そういう状況で「いかに自分の身を守るか」に細心の注意を払いながら、騙し騙し、なんとか続けていくしかない職業なのかもしれないなあ、と、このところ思いつつあります。

 

 さらに脱線します。

 予備試験は論文を通過するまでが最も過酷(合格率4%くらい)で、そこさえ通過すれば、あとは、ほとんど落ちない口述(合格率95%以上)と司法試験(予備経由だと合格率90%くらい)と二回試験(合格率99%以上)が残されているだけだと思っていました。

 実際に予備試験の論文を通過した時、とても過酷なロッククライミングを経て、必死に山頂に到達したと思った途端、一歩でも足を踏み外したら滑落するような、上り坂の尾根がまだまだ続いていた…そんな情景が思い浮かびました。

 その後、弁護士になって、今はどんな情景が思い浮かんでいるか、というと、相変わらず細い細い尾根の上を歩いています。上り坂ではなくなったかもしれません。ただし、受験生の頃は明るくて先が見通せていた情景も、今は真っ暗です。どこに辿り着くのかもわからないまま、滑落しないように慎重に歩き続けています。

 

 何の話をしたかったのかよくわかりませんが、まあ、今後も、受験生や修習生に対しては「今もすごく大変だと思うけど、弁護士になってからも大変だよ(たぶん)」というメッセージを繰り返し伝えていきたいですね。