司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

ソーンダーズとさまよえる受験生

※この記事は司法試験や勉強法とそんなに関係がありません。ただの雑記に近いです。一部、私が過去に書いた記事を紹介したところもあります。今回の記事に強いてタイトルをつけるならば「ビル・ゲイツおすすめ本』のなかのおすすめ本」です。

 

 今朝の北海道新聞には、昨日、札幌で行われた女子マラソンを観戦するために大阪から来た方や、兵庫から友人4人で来た方のインタビューが掲載されていましたね。

 朝から絶望的な気分ですが、絶望的な気分のときにいつも思い出すようにしている言葉があります。アインシュタインが言った(とされている)言葉です。

 われわれは人間性について絶望してはいけない。なぜならば、われわれは人間なのだから。

 さあ、では現実逃避のために今日も小説を読みましょう。 

 

目次

 

リンカーンとさまよえる霊魂たち』

「趣味は読書です」と言うと、なかなかの高確率で「おすすめの本を教えて!」と言われます。趣味が読書のひとには共感してもらえると思いますが、こんなに難しい注文はありません。

 相手が本を読み慣れていない場合、楽しむ以前に、そもそも読み切れないような本を紹介してしまったら迷惑です。他方、あんまりメジャーすぎる本を勧めて、「いやいや、趣味が読書とか言っておきながらそんな本を勧めるのかよ」と思われたらショックです。

 たとえば「小説」を勧めるとしましょう。間違ってピンチョンなんかを勧めて衒学的だと思われるのも嫌ですし、他方、宮下奈都さんを勧めて「ああ、知ってる。本屋大賞でしょ」とか言われるとしばらく立ち直れなくなります。

 そんなわけで、いつも『かいけつゾロリ』などと答えて誤魔化してきたのですが、私はついに、ひとに勧めるのにちょうどいい小説を見つけました。これからは、ソーンダーズの『リンカーンとさまよえる霊魂たち』(河出書房新社)を勧めることにします。

 あらすじはAmazonなどで上手にまとめられていますので、細かくは書きません。原題は、“Lincoln in the Bardo”。Bardoはチベット仏教用語で、キリスト教でいうところの「煉獄」のような場所です。そんな「この世」と「あの世」の間でさまよう霊魂たちと、リンカーンの物語です。

 ソーンダーズはアメリカでは有名な小説家ですが、日本ではなかなか本屋さんで見かけません。そして「設定」がいつも突き抜けてバカバカしいので、楽しく読み切れます。それでいて「テーマ」がいつも深刻なので、読み切った後に必ず「読んでよかった」と思わせてくれる物語です。

『睡眠こそ最強の解決策である』

 読み終わって紀伊国屋書店のカバーを外すと、本の帯に「ビル・ゲイツの「この夏読むべき5冊」にも選出!」というコピーが載っていました。これいかに、と思って調べて見ると、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏はかなりの読書家で、毎年、夏と冬におすすめ本をブログ+Youtubeで紹介しているそうです。

(そうだとしても、なぜ彼がこのような小説を勧めるのか…という疑問は残ります。まあ、没年だけで見るとリンカーン坂本龍馬と同時代人ですから、日本の社長が『龍馬がゆく』を勧めているようなものか…と勝手に納得しました。雑すぎますかね。)

 『リンカーンとさまよえる霊魂たち』は「2018年・夏の5冊」としてお勧めされています。彼の「読み終わったら友達と語り合いたくなるはず」という感想には、私も激しく同意します。

www.gatesnotes.com

  おいおい、ゲイツさんもなかなか良いセンスしてるじゃねぇか…と思い、他のおすすめ本も見てみたところ、以前、記事で紹介した『睡眠こそ最強の解決策である』(SBクリエイティブ)が「2019年・今年の5冊」として紹介されていました。

article23.hatenablog.jp

  私は上記の記事で「すべての学校関係者に読んでほしい」と書きました。しかし、確かに、現代人を睡眠不足に陥れる二大巨悪は「学校」と「会社」ですから、すべての経営者にも読んでほしいと思いました。(書評を見ると、ゲイツ氏は娘に勧められて読んだと書いていました。良い話…)

『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』

 そしてさらに遡ると、「2012年・夏の5冊」として、以前の記事で紹介した『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』(エクスナレッジ)が紹介されていました。

article23.hatenablog.jp

www.gatesnotes.com

 最初は「ゲイツさんもおしゃれな装丁の本を勧めているな〜」としか思わずに眺めていました。原題が“Moonwalking with Einstein”だったため、同じ本だということに気づかなかったのです。

 私は以前の記事で本の内容をほとんど紹介していなかったので、このたび、少しだけ紹介します。

 著者のジョシュア・フォアが紹介する「場所法(記憶の宮殿・ジャーニー法)」という記憶術は、一言でまとめると「空間的イメージ」に「視覚的イメージ」を結びつけて記憶するテクニックです。

 そもそも人間は「文字」や「記号」よりも、「場所」や「映像」を記憶しやすいように作られています。祖先がアフリカのサバンナで木の実を探していた頃のことを思い出してみてください。その頃から数万年しか経っていませんから、人間の脳みそは文字や記号で溢れる現代社会に適応できていません。

 では、例えば1組52枚のトランプのカードを記憶するとしましょう。自宅から最寄り駅までの歩き慣れた道に、26個の地点(例:玄関、銭湯、自動販売機、床屋…)を設定します。そして、それぞれの場所に、あらかじめ決めておいたイメージ(例:スペードの5=アインシュタイン、ハートの3=ムーンウォーク)を2枚1セットにして置いて行きます。

 それらをすべて置き終えたら、あとは頭の中で自宅から最寄り駅まで歩くだけで、52枚すべてのトランプのカードが順番通りに思い出せる…というわけです。だから、本のタイトルが“Moonwalking with Einstein”なのですが、どうでしょう、さすがにチャレンジングすぎるタイトルだと思いませんか。

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『21 Lessons』

 ここまでの文章は「ビル・ゲイツも勧めている本だから、安心して読んでみてください」という「箔付け」のためのものでした。せっかくなので、1冊くらい、今までに紹介していなかった本を紹介しておこうと思います。「2018年・今年の5冊」として勧められている『21 Lessons』(河出書房新社)です。

 ビル・ゲイツに勧められなくても(ましてや私なんぞに勧められなくても)誰もが知る、ユヴァル・ノア・ハラリ。『サピエンス全史』が歴史本、『ホモ・デウス』がSFに近いとすると、『21 Lessons』はエッセイに近いと思います。「雇用」「平等」「ナショナリズム」「移民」「ポスト・トゥルース」など、計21個のテーマごとに、ハラリ氏の面白い話が聞けます。

 そのうち、19個目のLessonのテーマは「教育」。21世紀の人類は10年ごとにまったく新しい職業に就かなければならない可能性がある、と前置きした上で、50歳くらいの「若い」年齢ならば、学習し続けなければならない社会になる、と予言しています。

(個人的には、趣味の資格取得は別として、司法試験を最後の「受験勉強」にしたいと思っていたのですが、どうやらもう何回かは受験勉強をしなければならないことになるかも知れませんね…)

 さて、この本の21個目、すなわち最後のLessonのテーマは、意外にも「瞑想」でした。先ほどあげた「雇用」などのテーマと並べると、ずいぶん違和感があります。

 さまざまな解釈があると思いますが、個人的には、ハラリ氏は、それまで20個のLessonで取り上げた難問を解決するための方法として瞑想を紹介しているのだと思いました。ハラリ氏は、これまでの著書もヴィパッサナー瞑想のおかげで書けた、とまで言っています。

 瞑想の効果については私も以前に記事を書いてみたことがあるので、よかったらそちらも覗いてみてください(結局、最後は自分の記事の宣伝…)。

article23.hatenablog.jp

蛇足

 なぜか大学の備付けPCがすべてMacだったため、爾来、Mac派です。そのため、自動的に反・Windowsだったのですが、このたび、思いのほかビル・ゲイツに親近感を覚えました。

 本が好きなんだなあ、と伝わる書評も良いですが、何より、たくさんの本を抱えてニッコリ笑う写真が良いですよね。私も、好きなだけ本を読んで、半年に1回、好きな本をたくさん抱えて写真に映るような人生を送りたいと思いました。