司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

くちびるに論証を(口述試験/当日/刑事編)

【読むとよいタイミング】予備試験の論文式終了後〜口述試験

 

 悪意のある切り取り方をして恐縮ですが、以前、首相が「五輪をやめるのは一番簡単」と発言したことがニュースになりました。(これ以上政治的なことは書きませんが、実質的に「無制限・有観客」で行われる競歩・マラソンだけは今からでも中止または延期してほしいと願っていることを、札幌市民として書き残しておきます。)

 さて、その「やめるのは簡単」が嘘だということは、おそらく本人も含めて、誰でもわかっています。

 航空用語に「帰還不能点(ポイント・オブ・ノーリターン)」という言葉があります。もともとは出発した空港に引き返せなくなる地点を指す用語だそうですが、一般的に、サンクコストが高まりすぎて、引くに引けない状況になったことを指す言葉として用いられています。

 受験生としては、司法試験に向けた勉強を始めて、自分をいかに早く「帰還不能点」まで到達させるか、ということが重要です。帰還不能点まで来ると、経験上、少なくともモチベーション不足で悩むことはなくなります。

 私の場合、法律の勉強を始めたのが2019年の6月ごろで、翌年の4月に、「受かったらいいな」から「落ちたら嫌だな」へ明確に変わり、ああ、ここが帰還不能点なんだ、と感じた記憶があります。

 帰還不能点の話も含めて、「頑張ろうと思わなくても頑張れる環境づくり」を学べる本として、『FULL POWER』(サンマーク出版)をおすすめします。(本のタイトルがミスリーディングだと個人的には感じています。良い本なのにもったいない。表紙に書いてある“WILLPOWER DOESN'T WORK”のほうが内容を適切に示しています。)

 まず、起業家と起業志望者の主な違いを説明しよう。

 起業家は、何らかの形で「帰還不能点」を経験していた。一方で起業志望者は、そのような経験を作り出していなかった。

 インタビューした人の中に、靴を売りたいという17歳の少年がいた。

(p.228から引用 以下略)

 前置きが長すぎて何の記事かわからなくなってきましたが、今回は、予告通り、口述試験の当日の様子、刑事編です。

 

※申し遅れましたが、この記事は前回の記事の続きです。

article23.hatenablog.jp

 

目次

 

2021年1月31日(日)

午前6:45

 この日も都内の自宅から向かいました。なんで私は2日とも「午前」なんだろう…と世の中の理不尽を嘆きつつ、頑張って起床しました。

午前8:00

 気のせいかも知れませんが、1日目と比較すると、2日目のほうが、新浦安駅から試験会場の道すがら、ホテルから出てくる受験生の数が多かったような気がします。主にホテルエミオン。こんなホテルに泊まったらテンション上がりすぎて眠れないだろうなあ…と思うくらい素敵な外観のホテルでした。

 2日目もきちんと試験会場の入口近くに伊藤塾の「神」が立っているので、お賽銭を投げて、試験会場に入ります。

午前8:20

 この日も集合時間より10分ほど早く到着し、検温を済ませて、受付で「くじ引き」を行います。この日、私は某室の「3番」でした。受付が終わると、各室「2番」以降の受験生は体育館に案内されます。

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(だいたいの位置関係)

午前8:30

  体育館は極寒でした。気象庁のデータによると、この日この時間の千葉の気温は「2.9℃」でした。一般的にペンギンは氷点下20℃を下回る気温にも耐えらえると言われていますが、寒いものは寒いです。寒すぎてほとんど記憶が無いです。

 同じ気象庁のデータによると、10月23日のこの30年間の最低気温は「14.1℃」だそうです。この気温でも厳しいと感じる場合は防寒具を装備して行くといいでしょう。カイロはほとんど無意味でした。

→ 気象庁|過去の気象データ検索

午前10:00ごろ

 自分と同室の前の順番の受験生の試験が始まるころ、自分が「発射台」に連れて行かれます。私は「3番」だったため、「2番」の試験が始まったと思しき午前10:00ごろ、連れて行かれました。

 口述試験は「何室」に当たるかによって、試験時間が若干異なります。15分程度から25分程度、という話は聞いたことがあります。そのため、体育館から「発射台」に呼び出される時間にも、差が生じます。(「発射台」から試験室に呼び出される時間にも、差が生じます。)

 自分が呼ばれるのが遅いと、「ゆっくり話を聞いてくれる主査なんだろうか?」という期待、あるいは、「ねちねち細かい質問をしてくる主査なんだろうか?」という不安が生じることになります。

 自分が呼ばれるのが早いと、「さっさと誘導を出してくれる主査なんだろうか?」という期待、あるいは、「答えられないと無慈悲に進んでしまう主査なんだろうか?」という不安が生じることになります。

 1日目は「1番」だったため、余計なことを考えずに済んだのですが、2日目は、余計なことを考えているうちに、どんどん緊張が高まりました。

午前10:30ごろ

 試験室の前の廊下で待たされる際にも、「1番」or「2番以降」によって様子が変わります。「1番」だと午前9:30ちょうどに入室することがわかっていますが、「2番以降」だと主査の準備が整うのを待つことになります。

 準備が整うと、部屋の中から、古い旅館のフロントにあるような、あの銀色のベルの音が聞こえてきます。それを合図に入室するのですが、当然、いつ鳴るかわかりません。ものすごく緊張します。

 両方経験してみて、どっちがマシだったかと訊かれれば、どっちも最悪だった、としか答えようがありません。地獄でした。

 というわけで、いよいよ試験開始です。問答を再現したものを以前に掲載しましたので、よろしければそちらをご参照ください。

article23.hatenablog.jp

午前11:00ごろ

 試験後は、1日目と同様、広い会議室のような待機場所に案内されました。2日目が午前の受験生は、きちんと暇潰しの道具を持って行ったほうがいいです。携帯電話やタブレットは使えません。(私は再現問答の草稿を書いた後、することが無さすぎて、手帳を千切って四連鶴を折っていました。)

 例年がどうだったのか知りませんが、昨年度は延期の影響で「予備試験の合格発表」から「司法試験の願書締切」までの期間が近接していたため、椅子の上には司法試験の願書の封筒が置かれていました。

 意気揚々と願書を書き始める若者もいれば、願書の封筒を床に置いたまま頭を抱えて動けない若者もいて、なかなか見応えのある人間ドラマでした。彼らの結果はどうだったんだろうか。

 そうそう、前回の記事で、周囲をキョロキョロ見回して監督員に何度も注意されていた若者を紹介しました。彼みたいな受験生には口述試験は難しかったんだろうな…と失礼極まりないことを勝手に考えていましたが、無事、司法試験の会場でふたたび遭遇しました。相変わらず元気にキョロキョロしていました。よかったよかった。

午前12:45

 ようやく解放。この日も「密」を避けるため、部屋ごとの分散退館でしたが、我々の部屋は呼ばれる順番が早く、前日よりは早い時間に解放されました。

午後12:00

 2日目は以上です。

 思えば、昨年度の予備試験は短答式試験が8月の酷暑に行われ、10月の論文式試験はマスク着用で最長3時間30分間の過酷な手書き試験をやらされ、それらをようやく乗り越えた先に、こんな「罰ゲーム」が待ち受けているとは思いもよらなかったです。

 司法試験の結果が出ていないので何も偉そうなことは言えないです(結果が出ても偉そうなことは言わない予定です)が、こんな「罰ゲーム」も、受けてよかったと思っています。その具体的な理由は「出題論点の重複があったから」なんですが、まあ、そんな話も、もし司法試験に無事合格できたら書き残したいなと思っています。