司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

世界遺産の中心で、愛をさけぶ(2級編)

※この記事は司法試験や勉強法とは関係がありません。

 

世界遺産検定」って聞いたことありますか?

 知らない友人が意外と多くて驚いているのですが、クイズ番組『Qさま』を観ていると、よく出演者のテロップで「世界遺産検定●級」と表示されていますよね。私は『Qさま』で優勝することを人生の目標の1つに掲げていますので、とりあえずは合格しておきたい検定の1つでした。

 ということで来る3月13日、会場で【2級】と【3級】を受験してきました。この試験、翌日には公式ホームページで正答が発表されます。自己採点してみたところ、結果は【2級】が73点・【3級】が70点で、マークミスなどがなければ合格予定です。

 勉強していて楽しい試験だったので、【2級】の受験を前提に「どんな勉強をどれくらいすれば合格できるのか?」ということを簡単に紹介したいと思います。いつかみんなで一緒に『Qさま』に出場しましょう!

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(pixabayからのイメージ画像)

目次

試験の特徴

 受験者の属性としては、旅行会社や航空会社の方々、それらの業界を目指す学生が多いようです。【2級】だと学生/社会人がおおよそ半分ずつ。私の隣の席の受験生は、小学生と思しき坊主でした。

 後掲の問題集に記載されたデータによると、2020年度、【2級】の受験者数は2,100〜3,700人程度でした。多い回では司法試験と同じ規模になりますね。それぞれの合格率は61%〜81%程度とのこと。

【2級】では、以下のような4択問題が60問出題されます。

2016年のオリンピック開催地であるリオ・デ・ジャネイロで、ブラジル独立100周年を記念して作られたキリスト像が立つ場所として、正しいものはどれか。
 1.  コパカバーナの山
 2.  イパネマの海岸
 3.  カリオストロの砦
 4.  コルコバードの丘

世界遺産検定公式ホームページからの引用)

 配点が1点の設問と2点の設問があって、60問で100点満点。このうち、60点以上で合格できます。勘で塗りつぶしても25点もらえるわけですから、合格ラインは低いと言えるでしょう。

結論:必要な勉強時間は10時間程度

「勉強していて楽しい!」と言っておきながら「必要な勉強時間は?」という問いを立てるのも支離滅裂なんですが、まあ、資格マニアを目指す者のブログとして、一応は検討しておきたいテーマです。

 まず、Googleで「世界遺産検定2級 勉強時間」と検索すると、上から順に「2週間くらい」「20〜30時間」「1か月間」などと書かれたページが出てきます。

 たしかに個人差が多少あるのかもしれませんが、高校で世界史を勉強して、ひととおりの基礎知識があることを前提とすれば、合格に必要な勉強時間は「10時間程度」だと思います。

(1) YouTube 1時間
(2) 公式教材 5時間
(3) 過去問 4時間

 私は大学受験で日本史と世界史しか使っていないため、地理は全然勉強していません。「高校で地理を勉強していると有利」と書いてあるブログもあったので、地理を選択していたひとはもっと少ない勉強時間で合格できるのかもしれません(フィヨルド、カルスト地形、デルタ地帯、などなど?)。

勉強その1 YouTube

 では、具体的にどんな勉強をするかという話に移りますが、まずは、世界遺産アカデミーの公式YouTubeを観ましょう。話はそれからです。

世界遺産検定2級学習アシスト動画【前編】 - YouTube

世界遺産検定2級学習アシスト動画【後編】 - YouTube

【2級】はざっくり言うと「世界遺産の基礎知識」「日本の遺産」「世界の遺産」の3分野から出題されます。このうち、このYouTubeで「世界遺産の基礎知識」を学ぶことができます。この分野だけは常識で解けない問題が出るので、真面目に対策しておきたいところです。

勉強その2 公式教材

 YouTubeを観終わったら、次に、公式教材を読みましょう。試験問題のうち9割はこの本の赤字と太字の部分から出題されると思って大丈夫です(残りの1割は、赤字と太字以外の部分と、時事問題です)。

 全部で240ページほどで、写真も豊富なので、じっくり読んでも5時間程度です。漫然と楽しみながら読むだけでも全然問題ないと思いますが、以下の点を注意しながら読むと試験対策的には効果的です。

・やたら「建築様式」の出題頻度が高いので、セットで覚える

・意外と「保有国」の知識を問われるので、セットで覚える

・1問だけ「地図問題」が出題されるので、地図も意識的に眺める

・1問だけ「英語問題」が出題されるので、余裕があれば英語の部分も読む

勉強その3 過去問

 最後に、過去問を解きましょう。過去に出題されたからといって再び出題されないわけではなく、反対に、意味不明なほどしつこく出題される知識もあります。2020年度には「天海が東照社を建設した」という知識が4回のうち3回の試験で問われています。

 過去問はだいたい、1回あたり20分程度で解き終わります。悩んで解けるような問題はなく、知っているか、知らないか、そのどちらかしかありません。間違った問題の復習を含めて、1回あたり1時間程度で終わります。

 公式過去問集には4回分の過去問が収録されていますので、全部やると4時間程度となります。よほど点数が取れない場合を除いて、試験対策はこれで十分だと思います。

声に出して読みたい世界遺産

 こんなブログでこんな記事を書いて、一体誰が読んでくれるんだろうか…と疑問を持ちながら、ひとまず書き切りました。ここから先は、さらに誰も読んでくれなさそうなことを書きます。

 

 世界遺産検定の勉強をする醍醐味は「カタカナの文字列」を暗記するところにあると思っています。RPGが好きなひとには共感してもらえるかもしれないですが、「円形都市ハトラ」「隊商都市ペトラ」「聖都カラル・スペ」「古都ルアン・パバン」あたりは文字を見ただけでテンションが上がりますよね。

 ちなみに今回勉強していて好きになった文字列のトップ3は「コンマゲネ王国のネムルト・ダー巨大墳墓」「聖山スレイマン・トー」「ランス・オー・メドー国立歴史公園」です。

「アツィナナナ」「ピマチオウィン・アキ」「テ・ワヒポウナム」「タプタプアテア」「ラパ・ニュイ」「ティムリカ・オヒンガ」「パパハナウモクアケア」「ンゴロンゴロ」あたりも声に出して読みたいですね。

 あと「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」「サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ」「サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ」とかを正確に覚えるのも楽しかったです。

 

 次回の試験は2022年7月3日、申込締切は5月20日です。私は今度【1級】を受験するかもしれないので、もし興味を持った方がいたら一緒に頑張りましょう!

 

ふがいない僕はヤマを張った

【読むとよいタイミング】予備試験後〜司法試験直前

 

 先日、弁護士会の勉強会に修習生の立場で参加させて頂きました。その勉強会で、「労働者から使用者に対する逆求償の可否」に関して判断した最高裁判例が取り上げられていました。

 そういえば、きちんと労働法の勉強を始めたのは去年の今頃、本番まで3か月を切った頃だったなあ〜と思い出して懐かしくなったので、今回は労働法について書こうと思います。

 労働法について書こうと思います、と言った直後に恐縮ですが、あんまり労働法のことは書いていません。むしろ、過去問や問題集を使って「ヤマを張る」方法について書いています。そういう“博打”に興味のない方や、司法試験過去問のネタバレが嫌な方はご注意ください。

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(Pixabayからのイメージ画像)

目次

過去問からヤマを張る

 そもそも、ヤマなんて張らないに越したことはないですよね。満遍なくすべての論点を潰せる余裕があるのであれば、ヤマなんて張らなくていいと思います。しかし、本番まで3か月しか無いのだとすれば、ヤマを張るしかないのも現実です。まあ、まずは目くじらを立てず、気軽に読んでみてもらえるとありがたいです。

 さて、ヤマを張るのであれば、まずは過去問から分析するのが王道でしょう。ということで、2011年から2020年までの司法試験の労働法第1問の出題テーマを並べると、こんな感じになります(2010年以前のデータが無いのは、私の気力が尽きたからです)(第2問の分は割愛します)。

司法試験労働法出題分析

 結論を出すには早すぎますが、この表を眺めていると、どうやら周期的に2021年は「契約」分野からの出題の可能性が高いのではないか…ということがわかります。

問題集からヤマを張る

 さすがに過去問だけでは心もとないですから、水町勇一郎先生が編著に携わった『事例演習労働法』(有斐閣)も使ってヤマを張ります。水町先生は2021年度の司法試験考査委員を務めており、名簿を見ると、2022年度も続投しているようです。

 この問題集には全部で51問(枝番号含む)の問題があります。出題テーマを分析して先ほどの表に書き加えると、次のようになります(新たに加わった論点は、赤字にしてあります)。

司法試験労働法出題分析

 どうでしょう、この辺まで来ると、眺めているだけで楽しくなってきますね。いくつかあやしい出題テーマが絞れてきました。

(なお、お恥ずかしい話ですが、私はこの問題集を解いていません。すばらしい「模範解答」がついているので、ひたすら読んで暗記していました。だって、時間が…)

判例集からヤマを張る

 ここまでで結論を出しても問題はないのですが、労働法では最新判例の事例がそのまま出題されるようなケースが目立っていたため、私は念のため『重要判例解説』も見ておくことにしました。

 令和2年度分と令和元年度分をパラパラと読んだ結果、そのままの事例で出題できそうな判例は3つくらいしかない、と踏みました。一応これも書き加えると、表は次のようになります。

司法試験労働法出題分析

 さあ、これらを踏まえて出題テーマを予想した最終結果は、以下のとおりです。

【金メダル】雇止め(と整理解雇を絡めた問題)
【銀メダル】使用者から労働者への求償
【銅メダル】管理監督者
【入賞】退職金不支給(と競業避止義務を絡めた問題)
【入賞】降格(人事権の行使 or 懲戒処分)

 なぁ〜んだ、って感じですかね。おそらく、ふつうに勉強しているひとならば、ヤマを張らなくても当然に論証を暗記しているようなテーマなのかもしれません。まあしかし、雇止めとかは論証の書き方が複雑ですからね、いざというときに自動的に手が動くくらい完璧に準備しておきたいところでした。

実際はどうだったのか

 そんなような予想をしつつ、結局、令和3年度の司法試験の労働法第1問の出題テーマは以下のとおりでした。

設問1 懲戒処分の有効性
設問2 使用者から労働者への損害賠償請求の可否
設問3 整理解雇の有効性

 …

 使用者から労働者への求償の問題がアタリ!でしたね(逆求償の事例で出題されるかと思いましたが、古典的な求償の事例で出題されました)。長々と書いてきましたが、今回はここでドヤ顔をしたくてブログを書いていただけと言っても過言ではない。

どやっ

 

 ちなみにこの「ヤマを張る」というのは、当然ながら、私オリジナルの勉強法(?)ではありません。以前このブログでも紹介したことがあると思いますが、資格スクエアの鬼頭政人氏がいくつかの著書の中で「ヤマを張る」勉強法を勧めています。

 この記事をここまで読んでもらえばわかったと思いますが、「ヤマを張る」と言っても、やっている作業は、過去問分析と、メジャーな演習本の分析、最新判例の分析です。勉強法としては王道中の王道ですから、他の科目でも役に立つことがあるのではないかな〜なんて思って書きました(正当化)。

その他 労働法おすすめ本

 最後に、せっかくなので、労働法を勉強するために読んだ本も紹介しておきます。

 まずは森戸英幸先生の『プレップ労働法』(有斐閣)です。オヤジギャグにアレルギー反応を持つ方にはつらい本かもしれませんが、我慢して読む価値のある入門書です。ぜひ頑張って読んでほしい一冊。

 私は森戸先生のオヤジギャグがクセになってしまったので、続いて『労働法トークライブ』(有斐閣)を読みました。対談形式でおもしろかったですが、テーマが実務的なため、試験対策的な意味ではこちらまで読む必要はないかもしれません。試験後、もし労働法に興味があったらぜひ読んでみてください。

 

 以上です。

 ブログを書くのが久々だったので近況でも書こうかな〜と思いましたが、記事が長くなってしまったので手短に済ませます。実務修習が始まってからずっと体調が良くなかったのですが、ようやく落ち着いてきました。生活にもゆとりが生まれてきました。

 とはいえこれからまた季節の変わり目ですから、どうか皆様も健康第一でお過ごしください。

 

ご冗談でしょう、ランニングマンさん【追記】

※この記事は前回の記事の追記です。

走りたくなった?(^ω^)

ならないよ

なんで?なんでなんでなんで?

えー
筋トレしてるからいいじゃん

有酸素運動してよ…

えー
チャリ通してるからいいじゃん

地に足をつけてよ…

なんで?なんでなんでなんで?

 

 前回に引き続き、実際に友人と交わした会話の再現です。

 なんとなく走りたくならないという気持ちもわかります。年代によるのかもしれませんが、私の場合、小学校のクラブ活動でも、中高の部活動でも、「走らされる」というのは懲罰でした。私も高校時代、部活動の顧問の先生から、縄跳びで「50回連続の二重跳び」に失敗した懲罰として10km走らされたのがトラウマです。

 前回の記事を読んでも走りたくならなかった方のために、走りたくなるような本をまだまだ紹介します。

 

目次

 

どれくらい走ればいいのか?

 その前に、前回の記事の末尾に書いた「どれくらい走ればいいのか?」という問いに答えます。

 前回紹介した3冊は、すべて医学博士の書いた本でした。私は、科学とは「批判可能性を持つもの」だと捉えています。科学であるためには、厳密に前提条件やら再現可能性やらを詳しく書く必要があるため、科学「的」な本のようにズバリと結論を書いてはくれません。

 というわけで、メンタリストDaiGo氏に登場してもらいましょう(すみません)。彼は『超効率勉強法』(学研プラス)のなかで、ズバリこう書いてくれています。

 過去14件の研究をまとめた質が高いデータによれば、海馬を増やすための運動ガイドラインはこのようになります。

1. 軽い運動の場合:1回40分のウォーキングを週に3回、最大心拍数の50〜60%ぐらいで6〜12か月続ける

2. 負荷が高い運動の場合:1回30分〜60分のジョギングまたはサイクリングを週3回、最大心拍数の80%ぐらいで3〜6か月続ける

 ただ、先日、メンタリストDaiGo氏が信者向けのビジネスを しれっと再開したことに対して、「彼の言うことはもう信じられない」と思ってしまった方も多いと思います。

 そんな方のために、ピンポイントでの引用となってしまいますが、『脳を最適化するブレインフィットネス完全ガイド』(CCCメディアハウス)という本にも同様の記載があるので、こちらも紹介しておきます。

Chapter3 健全な脳は、健全な身体に宿る

どんな種類のエクササイズを、どの程度やるか?

(略)量や頻度で言えば、30〜60分のエクササイズを最低週3回行うと良いだろう。

 この本は、見た目のうさんくささとは裏腹に、運動・食事・睡眠・瞑想といった観点から「脳を鍛える(=ブレインフィットネス)」方法を真面目に紹介している本です。今回は深掘りしませんが、またいつか詳しく紹介できればいいな〜とは思っています。

どれくらい走らなければいけないのか?

 ここまでの記載内容によって、「そんなに週に何回も運動したくないよ〜」ってことで、走る意欲を削いでしまったかもしれません。安心してください。前回の記事で紹介した本のなかには、「少しでも走れば効果がある」という例も紹介されています。

 まず、『脳を鍛えるには運動しかない』では、最大心拍数60〜70%でランニングマシーンを使った場合に認識の柔軟性が高まる、という事例を紹介しています。認識の柔軟性とは、連想力や発想力のようなものです。

 次に、『一流の頭脳』では、9歳児が20分間の運動をした場合に読解力が向上する、という事例を紹介しています。この事例が紹介されているチャプターの見出しは「たった一度の運度でいい」です。やさしいですね。

 たった一度でいいんです。どうでしょう、そろそろ走りたくなってきましたか?

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(Pixabayからのイメージ画像)

なぜ走らなければならないのか?

 そもそも、私たちはなぜ走らなければならないのか? 次はそんな視点から、走りたくなるような本を紹介して行きます。

 前回紹介した『脳を鍛えるには運動しかない』の著者であるジョン・J・レイティ博士は、共著で『Go Wild』(NHK出版)という本も出しています。

 前回の記事で私は、進化論的な視点から「なぜ走ることで記憶力が高まるのか?」という説明をしてみました。この本では、それをさらに突き詰めて、食事や睡眠や瞑想といった観点も含めて、私たちが最も高いパフォーマンスを発揮できる方法を多角的に解説しています。

 あまりにテーマが広範なのでまとめにくいですが、その方法をあえて一言でまとめるのであれば、「Go Wild」すなわち「野生的なライフスタイルを取り戻すこと」です。そうだとすると、走るとしても「野生的に走ること」が望ましいと考えられます。というわけで、この本では大自然の中を走る「トレイルラン」を推奨しています。

 この進化論的な考察をさらに突き詰めるどうなるか? 実際に「Go Wild」な生活をしている人々を取材した本が、『Go Wild』のなかでも紹介されている『Born to Run 走るために生まれてきた』(NHK出版)です。

 この本は先の2冊とは著者も違いますし、内容も全然違います。それにしても『脳を鍛えるには運動しかない!』→『野生の体を取り戻せ!』→『走るために生まれてきた!』と、どんどん主張が先鋭的になってきました。

 この本では、3つの旅の物語が複合的に進行して行きます。

 1つ目は、メキシコの山岳地帯に生活していると言われるタラウマラ族を探す旅。タラウマラ族は、2日日で700km(東京〜広島)を走破すると言われている、最強の“走る民族”です。物語はタラウマラ族の消息を知ると噂される「カバーヨ・ブランコ」なる謎の人物を探す場面から始まります。

 2つ目は、著者自身の「走ると足が痛くなる」という悩みを解決するために、様々な専門家のもとを訪れて、その謎を科学的に解明するための旅。この旅の過程で「人間は走るために生まれてきた」という著者の仮説に対する考察が深まって行きます。

 そして3つ目は、(どこまで踏み込んで言っていいのか微妙ですが…)著者がアメリカから最強のウルトラランナーを引き連れて、メキシコの秘境に乗り込んで行って………という旅。この部分がクライマックスで、最もエキサイティングです。

 なかなかにページ数が多い本なので、あまり試験直前に さくっと読める本ではありません。しかし、物語風のルポタージュなので、気分転換にはなるかもしれません。今まで紹介してきた本のなかでも、「走りたくなる度数」は最も高いと思います。今回の記事は、この本を紹介したくて書きました。

なぜ「走る」でなければならないのか?

 私たちは走るために生まれてきたーーこれだけで冒頭のシロクマの質問に対する答えとして十分な気もしますが、もう少しだけ踏み込んで話をします。

 これまで紹介した本の中では「運動」と言う言葉としか記載されていないものを、私はあえて「ランニング」や「走る」という言葉で記載してきました。私がランニングにこだわっているのには理由があります。

 その理由とは、骨です。

 まず、山中伸弥教授がMCを務めたNHKスペシャル「シリーズ人体」を覚えていますか? このシリーズでは、従来の「脳が身体を支配する」という一方向のモデルではなく、新たに「身体から脳に対してもメッセージを送っている」という双方向のモデルが提示されました。

 例えば、脂肪はただの備蓄品ではなく、「満腹だよ!」というメッセージを脳に送る機能を持っています。そのため、生まれつき脂肪がつかない病気(脂肪萎縮症)にかかってしまった子どもは、脂肪から脳に対して「満腹だよ!」というメッセージを送ることができず、親が静止しないかぎり、際限なく食べ続けてしまうことがあります。

 では、骨からはどんなメッセージが送られているのか? 本も出版されていますが、NHK健康チャンネルにもダイジェスト記事が残っていました。

www.nhk.or.jp

 メッセージ形式で書くのであれば「若さを保て!」でしょうか。骨に対して適度な衝撃を与えて、適度に骨が壊されることによって、新たな骨が作られ続けます。その際に骨から出されるメッセージ物質によって、記憶力を高めることができると考えられています。

 このような理由から、私は「筋トレ」や「自転車」よりも、記憶力向上のための運動として「走る」ことが適していると考えています。

走ると最終的にどうなるのか?

 前回の記事の冒頭で村上春樹の話から始めたので、最後も村上春樹の話で終えたいと思います。彼は『やがて哀しき外国語』(講談社)というエッセイ本のなかで、こんなことを書いています。

 長距離を走る人間には退屈で凡庸な人間が多いと言う説がある。僕自身も長距離を走るわけだが、この説にはかなり信憑性があるように思う。たとえばランニングの専門誌の投書欄なんかを読んでいると、確かにこりゃ退屈だなとつくづく感心させられることがある。世の中には数々の専門誌があるけれど、こと文章的退屈さに関してはランニング雑誌はかなりいい線をいっていると思う。歯科技工士の専門誌だって文章的にはもう少しカラフルではあるまいか。

 かなり辛辣ですよね。

 もし私の文章が退屈だと感じられている場合、私が長距離ランナーであることが原因です。反対に、私の文章が退屈だと感じられていない場合、私の走り込みが足りない証拠です。

 みなさんも長距離ランナーになって「あ〜あ、退屈で凡庸な人間になっちまったな〜」と言ってみたくありませんか?

余事記載

 さて、これでキレイに(?)終われるかと思いきや、前回の記事の末尾で、私が「どれだけ走ったのか?」を書く、と予告してしまっておりました。完全に余事記載。けどきちんと書いておきます。

 スマートウォッチなるハイテク機器のGPS機能を使わず、スマホのメモ帳に完走時間をメモしていただけなので、距離については正確ではありません。

  • 集計期間: 2019年12月2日〜2021年5月10日(525日)
  • 走った日数: 156日
  • 1回に走った距離: 約5km
  • 期間内に走った距離: 約780km

 地球1周分くらいは走ったかな〜なんて思って集計を始めましたが、実際には東京〜札幌間(約830km)にも及びませんでした。タラウマラ族2日分。恥ずかしい…

 3.37日に1回、走っていたようです。3日に1回は走ろうと決めていましたから、片頭痛で寝込んでいた日数を考慮すると、こちらはまあ予測通りでした。

 ちなみに司法試験までの期間で集計してみましたが、現在も北大構内を元気よく走っています。もし見かけたらぜひお声がけください!