司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

司法試験予備試験に1年合格したペンギンの備忘録

文学部卒。元会社員。2019年夏頃から勉強を始め、2020年度の司法試験予備試験・2021年度の司法試験を通過しました。

八月が永遠に続けば

サイトマップ(2021年9月現在)


※以下、雑記です。

 ついに2日後、司法試験の結果発表です。早く結果が知りたい反面、このまま永遠に発表されなければいいのに…とも思ってしまいます。この気持ちはなんだろう〜

 良い機会なので、サイトマップ(=上記リストのこと)を作りました。ちょっとした意図があって毎度わかりにくい記事タイトルをつけてきたのですが、そんなことより、せっかくこのブログを見に来てくれたひとがたくさん記事を読んでくれるよう案内したいと思ったからです。

(細かい恨言。このブログはHTMLのtitleタグにSEO対策用のわかりやすい記事タイトルを入れているので、一覧で見たいひとはGoogleでsite検索すればええやろ…と思っていたんですが、8月24日付でGoogle先生がtitleタグを考慮せず勝手に表示画面を生成するサービスを始めてくれました。ありがとうGoogle、おかげでサイトマップを作る気になったよ…
 参考リンク:Google検索の“勝手にタイトルを変える仕様”に波紋 消費者庁などの注意喚起ページが逆の詐欺タイトルに - ITmedia NEWS


(Pixabayからのイメージ画像)

 以前、何かの記事に書いた気がしますが、あらためてきちんとお伝えしておきますと、このブログは訪問者数やページ閲覧数について、Googleアナリティクスを使って、個人を特定しない形での集計を行っています(コピペですがプライバシーポリシーも作りました → こちら)。

 集計の結果、この2か月間で1,100人を超える方々が訪問してくださり、6,300を超えるページ閲覧をして頂いたことがわかりました。ものすごい数字です。私の通っていた地方公立高校の全生徒よりも多い人数かと思うと、恐ろしさすら込み上げてきます。

 2か月間、書いてて楽しかったです。が、「誰かが読んでくれている」と思って書くから楽しいんだということにも気づけました。あらためて、ありがとうございました。このブログを読んでくださった皆様のもとに、良い結果が訪れることを願っています。


腑抜けども、最適の勉強法を見せろ

【読むとよいタイミング】勉強開始直後/成績が伸び悩んだら

 

 司法試験の結果発表前、おそらく次回が最後の更新になると思います。次回はサイトマップを作っておこうと考えているため、中身のある記事は今回で最後です。不合格だったらペンギンとしてのペルソナを脱ぎ捨てて受験生に戻りますが、もし無事に合格していたら引き続きペンギンとして更新を続けると思います。

 このブログはもともと、私が司法試験のために読んだ、広い意味での「勉強法」に関する60冊の本についての情報をまとめる目的で始めました。2か月でだいたい20冊くらいは紹介できたと思います。

 うすうす勘づいている方もいらっしゃるかと思いますが、ストレートに「勉強法」について書いてある本をほとんど紹介していません。なんかテーマとして「それを言っちゃあ、おしまいよ」という感じがして、避けてきただけです。すみません。

 しかしこれを避けて更新を止めたら、なんか人間として(ペンギンとして?)大事なものを失う気がするので、重い腰を上げて書いておきます。絞りきれなかったので、比較的多めの本を紹介します。

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(Pixabayからのイメージ画像)

目次

 

「読みやすさ」重視

 現時点で大炎上中の人物の本を最初にあげるのは心苦しいものの、まずはメンタリストDaiGo氏の『超効率勉強法』(学研プラス)を紹介します。私は今般の彼の発言内容に全面的に反対の立場ですが、そうは言いつつ、これほど読みやすく、広く薄く勉強法について書いてある本が他に見つからないです。

 この本では、はじめに「悪い例」として、テキストにラインマーカーを引く勉強法や、テキストを読み返す勉強法、講義内容をすぐに復習する勉強法などをあげています。これらの勉強法については、心当たりのある方も多いのではないでしょうか? なぜこれらの勉強法の効率が悪いのか、という点を導入に、効率的な勉強法について解説しています。

 まあ、しかしながらメンタリストDaiGo氏については、金輪際、彼の著作は購入しないという方もいらっしゃるかと思いますし、今後の対応を見るまで購入は控えたいという方もいらっしゃるかと思います。そういう方のために、もう1冊、読みやすい本を紹介します。

 この『進化する勉強法』(誠文堂新光社)は、日本の心理学者が、広く勉強法についてまとめた本です。メンタリストDaiGo氏の本と同様、イラストが豊富で読みやすく、幅広く勉強法を紹介しています。

 これらは2冊も幅広いトピックを扱っているため、重複する内容もあれば、カバーしている分野が違うトピックもあります。ただ、記憶の定着に必要な「想起」「反復」「分散」の基礎を学ぶ目的であれば、どちらも十分な説明がなされていると思います。

脳科学」重視

 定義があいまいなため、あまり「脳科学」というワードは好ましくないのかもしれませんが、この項目では、「脳研究者」としてテレビや新聞でご活躍の東京大学教授・池谷裕二氏が推薦されている本を紹介します。

 先ほど「読みやすさ」重視で紹介した2冊に比べると、単純にページ数も多く、イラストも少なめです。その分、丁寧に実験内容などが引用されているため、ひとによっては、かえって理解がスムーズに進むかもしれません。

 いくつか読んだなかで、一番役に立ったのは『使える脳の鍛え方』(NTT出版)でした。アメリAmazon「教育・心理学部門」第1位!とのこと。

 私が以前から標語のように「想起」「反復」「分散」と言っているのは、この本の要約とも言えます。また、かつて紹介した『Ultra Learning』で推奨されている「とにかくやってみろ」という教えや、『知ってるつもり 無知の科学』で指摘されている「自らの理解不足に気づく重要性」についても、満遍なく解説されています。

 ちなみに、この本でも「悪い例」として最初に槍玉にあげられているのは、テキストにラインマーカーを引く勉強法でした。(ここまで叩かれると擁護してあげたくなりますよね…テキストをカラフルにするのも塗り絵みたいで楽しいじゃないですか!)

 

 次に、『脳が認める勉強法』(ダイヤモンド社)です。こちらは現時点でAmazonの商品画像の本の帯に池谷氏の推薦文が掲載されていますね。

 しつこいかもしれませんが、この本でも「想起」「反復」「分散」が大事であるということが述べられています。ただ、こちらの本のほうが、脳みその機能に関する説明が厚く、「脳科学っぽさ」が強いです。(原題が“How We Learn”ですから、我々は一体どのように学んでいるのか?という解説に重きが置かれている印象を受けます。)

 脳みその機能に関する説明、という点では、池谷氏が書かれている本も非常に勉強になります。たくさんの本を書かれていますが、ここでは『受験脳の作り方』(新潮社)を紹介します。

 池谷氏は海馬の研究が専門だ…とどこかに書いてあった気がします(違ったらすみません)。この本を読むと、その「海馬」がどんな性格をしていて、どうしたら手懐けることができるのか、という理解が深まります。

 文庫本でページ数も多くないですし、池谷氏の文章はとにかくわかりやすくて読みやすいので、読み物としても楽しめると思います。無限に勉強し続けたくなるような文章を、少しだけ引用しておきます。

 ところで、脳を使いすぎると疲れてしまうのではと心配になる人がいるかもしれませんが、じつは、脳は疲れません。もし勉強していて疲れを感じたとしたら、それは脳ではなく、目や肩など、身体の疲労ではないでしょうか。

 なぜなら、脳は昼の夜も休むことなくずっと活動していてもヘコたれない仕組みになっているからです。それもそのはず、脳が休んでしまったら呼吸さえできなくなってしまいます。脳はタフなヤツなのです。一生働き続けても平気なようにデザインされているのです。ですから、皆さんも遠慮することなく脳をどんどん刺激し続けましょう。

自己啓発感」重視

 最後に紹介したい本は『Learn Better』(英治出版)です。アメリカAmazon2017年ベスト・サイエンス書!とのこと。

 この本は以前、別の記事で「メタ認知」の重要性を伝えるために紹介した本です。成績の良し悪しは、「IQ(地頭の良し悪し)」よりも「メタ認知」に依存する、という研究成果を取り上げました。IQよりも大事なものがあるなんて、すごくないですか?

 これまで取り上げてきた本で紹介されているような勉強法のテクニックもきちんと紹介されている(「悪い例」として、テキストにラインマーカーをする勉強法があげられている…)ことに加えて、この本が他と違うのは、序盤で「目標設定」や「学習環境」といったテーマが厚く論じられている点です。

 少しだけ引用します。

 このプログラムがあれほどの成果を上げた理由の一つは、成功への強い期待を集団単位で生み出したことにある。

 私は自分の研究でこれを見てきた。私は同僚たちと共に、教師の学生に対する態度が成果に大きな違いを生むのに気づいた。例えば、私たちの調査では、教師に大学まで卒業すると見込まれた高校生は大卒の資格を手に入れる確率が三倍も高かった。

 前回『鬼滅の刃』の話だけをしたので今回『ONE PIECE』の話をします。ルフィが「おれは信じられてる!!!」と言って馬鹿力を出すシーンがありますよね。名シーンですし、私ももちろんあのシーンが好きなんですが、ああいうのってマンガだけの話じゃないんだ〜と思うと夢がありませんか? 脳みそお花畑ですか?

 

 以上です。

 こんなクソ長い記事にここまでお付き合い頂いた方にだけ特別に教える…というわけでもないのですが、個人的には『Learn Better』が一番好きです。どれか1つだけオススメしてくれ!と頼まれたらこの本を勧めます。

 それはさておき、こんなクソ長い記事にここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。『最後かもしれないだろ? だから、ぜんぶ話しておきたいんだ…』ってことで、どうかご容赦ください。

 

誰のために司法試験は生まれた

※この記事は勉強法と無関係です。司法試験については多少書いてあります。

 

 誰も気にしてないと思いますが、前回の更新から少し間が空きました。司法試験の結果発表まで2週間を切り、不合格だった場合にすぐアクセル全開で勉強を再開できるように、思い残すことがないよう過ごそうと思ったからです。

 というわけで、司法試験が終わったら絶対に読みたいと思っていた『鬼滅の刃』を、むさぼるように読んでいました。会社の先輩にネタバレされた通りの結末で、その事実に一番驚きました。(心臓が口からまろび出るかと…)

 ここで、私の大好きな『ONE PIECE』と比較検討しながら、少しだけ「令和の時代にひろく受け入れられる主人公像」について書こう…と思ったら余裕で5,000文字を超えてしまったので、一旦全部消しました。

 炭治郎は、同調圧力がなく、プロジェクト単位で働き、人の話をよく聞き、戦闘中でも思考を続け、昔のことをよく思い出し、人を思いやり、「やるべきこと」をやり、わずか23巻で強くなる、“和風”で、筆マメで、家族思いの、いいやつです。

 私も週刊誌で読んだ程度のことしか知りませんが、またいつの日かワニ先生の次回作が読みたいものです…

 …と、あやうく前置きだけ書いてアップするところでした。危ない危ない。本題に入ります。今回紹介するのは、もう1つ、司法試験が終わったら絶対に読みたいと思っていた『誰のために法は生まれた』(朝日出版社)です。結論だけ先に書いておくと、とてもおもしろかったです。法律を学ぶすべてのひとにオススメしたい。

 

目次

 

一般教養科目という現代の悲劇

 令和4年度の予備試験の論文式試験から「一般教養科目」が廃止され、「選択科目」が導入されます。(短答式試験には残るようですが、あんなの、文系学生にとっては「運試し」でしかないですよね。)

 そのため、ここで一般教養科目について書いても何の役にも立たないわけですが、「うわぁ、過去の受験生はこんな意味不明な罰ゲームを受けさせられていたんだ…」と感じ、自らの相対的幸福度を高めてもらうには良い材料だと思います。

 別に読まなくても支障ありませんが、試験問題の設問部分と、ほとんど何も述べていないに等しい「出題の趣旨」が司法試験員会のホームページに掲載されています。下記リンクの26ページ以降です。

→ https://www.moj.go.jp/content/001340861.pdf

 ただ、上記書面には著作権の関係で原文が掲載されていません。出典は新潮社版・福田恒存の翻訳によるものです。引用されていた部分は142〜147ページだと思います。

アンティゴネ vs. クレオ

 それまでの一般教養科目では、センター試験で言うところの「評論」分野の出題が中心でした。私は模試でしか対策していませんでしたが、当然ながら、模試の問題も評論でした。

 しかしここに来ていきなりの戯曲、しかも突然「アンティゴネ」だの「ポリュネイケス」だのカタカナが出てきて、天を仰いだ受験生がほとんどだと思います。私は、別の意味で天を仰ぎました。それは、「ネタ本」と思しき本を購入して、目次まで読んで、本棚に眠らせていたからです。

『誰のために法は生まれた』は、ローマ法が専門の法学者・木庭顕先生が、中高生を相手に、映画や戯曲等の古典を題材にして行った講義を再構成した本です。そのなかの題材の1つが『アンティゴネー』(こちらは岩波版)でした。

 アンティゴネは、フロイトの「エディプス・コンプレックス」で有名なオイディプス王と、彼の「母かつ妻」のイオカステとの間に生まれた娘です。祖国を追われた兄ポリュネイケスが、敵国の軍隊を引き連れて攻め込んで来て、死亡します。その遺骸を埋葬してはならないと布告を出すクレオンと、埋葬したいアンティゴネとの論争。

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 試験問題としては、「アンティゴネクレオンの議論の対立軸を示して、同じような対立を生じている現代の社会現象をあげて論ぜよ」という問いです。あなたなら、どのような対立軸を示しますか?

 哲学者ヘーゲルも含め、通説では、「親族」代表のアンティゴネ vs.「国家」代表のクレオンという対立軸があげられるようですが、アンティゴネを血縁主義者とみなす解釈に木庭先生は疑問を呈しています。

 ちなみに私は、「伝統」と重んじるアンティゴネ vs.「現在」を重んじるクレオンという対立軸をあげて、C評価でした。論外。(再現答案は他に晒さない、という約束で某予備校に提出しているため、ここではこれ以上踏み込んで書きません。まあ、C答案に興味はわかないと思いますが…)

 では一体、木庭先生はどのような対立軸を示しているのでしょうか? 「ここまで読んで、気になった方はぜひ本を読んでみてください〜」という詐欺師的な説明で逃げたい気持ちでいっぱいですが、少しだけ書いてみます。

 対立軸は、「個人」を象徴するアンティゴネ vs.「集団」を象徴するクレオン、です。

 まず、集団のほうがわかりやすいので先に書くと、クレオンは、裏切り者は「敵」であって「味方」ではないから埋葬しない、という形で、敵味方の「集団」を基準に議論しています。

 これに対して、アンティゴネは個人を象徴します。兄は死によって完全に「個」となりました。死んだら誰ともつながることができなくなるからです。そんな「個」となった者への尊重が、「弔う」こと、すなわち埋葬する行為に表れています。

 そんな、かけがえのない(=代替がきかない)「個」を尊重することから生じる連帯こそが、デモクラシーの基礎になる。集団のために個人に犠牲を強いるような“連帯”はデモクラシーの基礎にならない、という結論です。

 どうでしょう? 『誰のために法は生まれた』がネタ本だというのは私の憶測にすぎませんし、この対立軸が唯一の「正解」というわけではないと思います。しかしまあ、一体、どこのハイパー受験生がこんな対立軸で答案を書けると言うのでしょうか。

(ちなみに、ネタバレするので「どこ」とは言えませんが、『鬼滅の刃』でも、鬼殺隊と鬼がこの対立軸で議論をする場面が出てきます。こういう普遍的なテーマを しれっと入れ込んでくるところが『鬼滅の刃』の凄さですよね…)

誰のために「占有の訴え」は生まれた

 司法試験に合格するまではあんまり法律のことを書かないようにしようと思っていたのですが、今回は少しだけ書きます。物権法を勉強していると、民法202条2項という、謎の条文に出会いますよね?

占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

 いやいや、不法占拠されてるんだから、所有権を主張するに決まってんじゃん!と。

 この条文について、さらに謎の判例が出てきますよね?

占有の訴えに対し防御方法として本権の主張をすることは許されないが、これに対し本権に基づく反訴を提起することは、禁じられない。(最判昭40.3.4)(『判例六法』(有斐閣)からの引用)

 いやいや、だったらさっきの202条2項いらないじゃん!と。

 この判例短答式試験の過去問を演習していると遭遇するので、いつも意味わかんないなあ、と思いながら解いていました。しかし、当たり前のことを言ってるだけの判例だから、選択肢間違えないし、まあいいか、と割り切っていました。

 ところが、木庭先生はこの判例に対して、「当たり前」どころか批判的です。この占有状態を一時的に保護する意識があるかどうか(少なくとも問題を吟味する意識があるかどうか)が「社会の質を決める」とまで言っています。

 条文や判例のことは無責任に書きたくないので、ここは「気になった方はぜひ本を読んでみてください〜」という詐欺師的な説明で逃げます。すみません。いつか私も自分の言葉で説明できるよう、現在、ギリシャ神話から勉強し直しています。

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(Pixabayからのイメージ画像)

法律学習はつまらないのか?

 この本には随所で、法を学ぶことへの愛と、現在の法律教育への絶望感が滲み出ています。例えば、東大の本郷キャンパス図書館で本やノートの盗難が多いというエピソードを紹介した後、こんなことを言っています。

 なんでそういうことになるかというとね、無茶苦茶に競争している。盗めば競争に勝てるというわけでは全然ない。当たり前だ。でも、クソクソな気分で、だんだん人間自体がクソになっちゃうわけだ。クソパターンもいいところだ。(129ページ)

 すみません、すごく良いことを言っている文章の、おもしろい部分だけを抜き取って引用してしまっています。(勢いがすごいですよね。)私も再来週、司法試験に不合格だった場合にクソクソのクソ人間にならないよう、心を強く保って結果発表を見届けようと思いました。